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イベントの取材・レポート

【取材】インテックス大阪安全大会2025:展示会・イベント業界全体の安全を推進するための大切な場 大会の内容と出展ブースをレポート

8月4日、インテックス大阪にて「インテックス大阪安全大会2025」が開催されました。インテックス大阪が2017年より継続開催する安全推進イベントです。当初の施設安全利用から、今や展示会業界全体の安全啓発を目的とする大会へと成長しました。本大会は、展示会場特有の複雑な施工現場課題に対応し、施設・主催者・施工作業者らが安全な作業を再確認する重要な機会です。2025年のスローガン「見逃すな!慣れた手順も落とし穴」のもと、関係者が「共創」し、安全最優先の現場作りを目指します。MICE TIMES ONLINEも安全大会に参加して取材しましたので、当日の様子をお届けします。

開催概要

名称:インテックス大阪 安全大会 2025
開催日:2025年 8月4日(月)13:00〜17:00/協賛出展エリア  15:00〜17:00/本大会
会場:インテックス大阪 3号館
主催:インテックス大阪 運営共同企業体

公式Webサイト https://intex-anzen.com/

インテックス大阪安全大会開催の目的

インテックス大阪安全大会2025は、関西を代表する大規模展示会場であるインテックス大阪が2017年に初めて開催して以来、継続的に行われている安全推進のためのイベントです。当初は施設を安全にご利用いただくことを目的としていましたが、現在では展示会業界全体を巻き込み、安全啓発を行う大会として大きく成長を続けています。展示会産業が活況を呈する秋口を前に、施設側、主催者側、そして施工作業者といった関係者が一堂に会し、安全な施工作業を再確認する重要な機会として定着しています。2025年の開催で8回目を迎えました。

2025年スローガン「見逃すな!慣れた手順も落とし穴」

本大会の主な目的は、一般的な建設現場とは異なり、指示系統が複雑で現場でのコントロールが難しいとされる展示会場での施工現場の特有の課題に対応することにあります。働き方改革関連法による時間外労働時間の上限規制や、業界における人材不足が常態化する中で、経験の少ないスタッフに安全の重要性を定着させることが大きな課題となっています。2025年のスローガンは「見逃すな!慣れた手順も落とし穴」と掲げられ、これは前大会で最優秀賞を受賞した安全標語をテーマにしたもので、慣れた作業においても緊張感を持って臨むことの重要性を訴え、管理者にもその意識を現場全体に広めることを促しています。大会は、協賛企業をはじめとする業界関連企業の皆様と「共創」することにこだわり、現実的でコストをかけずに現状を見直す方法を共に考える場を提供することで、安全最優先の現場作りを目指しています。

リボン

開催内容

具体的な開催内容としては、インテックス大阪で実際に発生した事故のケーススタディや、緊急時における主催者側と施設側の連絡体制の確認などが行われます。また、G20開催時のテロ対策やコロナ禍における感染症対策の事例紹介など、社会情勢に応じた講演も実施されてきました。大会と連動した取り組みとして、「安全推進月間」が設けられており、2025年9月を安全推進月間と定め、現場での安全呼びかけを実施しています。
この活動の一環として、「展示会の安全を守ろう!」をテーマにした「安全推進月間リボン」(画像)が作成・販売され、安全啓発ポスターも制作されています。2025年8月4日にインテックス大阪の3号館で開催された本大会は、前大会を上回る59社の協賛企業と18社21小間の出展があり、展示会業界全体の安全意識向上と課題解決に向けた取り組みを推進しています。

「インテックス大阪 安全大会 2025」15:00~17:00

・施設利用時の安全管理について  インテックス事業本部
・熱中症に気をつけて!/大塚ウエルネスベンディング株式会社 関西支店 大阪営業所
一般社団法人 日本臨床栄養協会認定 NR・サプリメントアドバイザー 熱中症対策アンバサダー 佐藤隆史 様
・展示会搬入搬出における安全パッケージの提案/一般社団法人 日本展示会協会 安全対策委員会 委員長 メッセフランクフルトジャパン株式会社 代表取締役社長 梶原靖志 様
・展示会開催中の震災体験から得た教訓と対策/一般社団法人 日本展示会協会 安全対策委員会 副委員長 
 株式会社日経イベント・プロ 執行役員 イベント事業担当補佐 兼 企画・イベントDX推進担当補佐 安藤 英賢 様
・安全標語 表彰
・安全宣言


救命講習の様子
救命講習の様子

安全大会の様子

ここからは安全大会でどのようなお話があったのか、簡単にまとめてお届けします。13時から開催されていた大阪市住之江消防署職員による救命講習には、15名ほどが参加。胸骨圧迫やAEDの使用法などをレクチャーされていました。

安全大会の開場時間が近づくと参加者が集まり、受付には列ができていました。受付ではひとりに1枚シールが渡され、すぐ横に貼りだされた安全標語に投票ができるようになっています。参加者の方がお互いに「久しぶり」と挨拶したり、熱心に名刺交換したりする姿が見られました。参加者の多くは男性です。

安全大会2025

安全大会ではペーパーレス化のため、事前にメールで講演資料が配布され、必要であればプリントアウトしてくるようアナウンスがありました。現地でもダウンロードできるよう、QRコードが掲示されていました。

安全大会2025

(1)開会挨拶

一般財団法人 大阪国際経済振興センター
理事長 長沢伸幸氏

「インテックス大阪でも事故が起こっており、より安全への意識を高めているところ。外国人や経験の浅い労働者が増えているので、事故も増えると予想される。施設管理者だけでなく、関わる全ての人が手を取り合い、連携していく機会にしたい」

安全大会2025

(2)施設ご利用時の安全管理について

インテックス事業本部 催事運営担当 小浦太洋氏

「施設利用期間中に発生した事故は、すべて利用者の責任となる。出展者マニュアルを作成する前に利用案内や危機管理マニュアルを必ず確認してほしい。設営・撤去作業中は危険を伴うため、安全パトロールを自主的に実施して。資料に載せているチェック項目は、あくまで一例。特に「ヘルメットの未着用」「天板上作業」などの不安全行動は、今でもよく見られる。より一層の注意喚起と是正指導を徹底しよう」

ここで実際の事故事例を写真と動画で提示。動画では、フォークリフトのツメに作業員が乗って移動する姿を見せ「よく見られる不安全行動。楽だからといって乗る人が多いが、事故につながる」と注意を促しました。

インテックス大阪の取り組み
「業界の繁忙期となる9月を「安全推進月間」に設定。安全推進月間リボンは、ほかの会場でもつけられるよう、あえてインテックス大阪の名前を入れていない。安全への取り組みに賛同いただける方には、ぜひリボンをつけてほしい。

最近は外国人労働者の増加や手軽なバイトアプリの普及で、不慣れな作業員が増えている。誰にでも安全対策が伝わるよう、大阪ディスプレイ協同組合に協力してもらい、「安全な作業の手引き」を鋭意製作中。ヘルメットの着用指針を定めるため、ヒアリングを進めている。義務化を進めているけど、出展者は着用協力でとどめるしかなさそう。関係各所から意見を聞き、現場の安全向上に努めるので、協力をお願いしたい」

安全大会2025

(3)熱中症に気をつけて!

大塚ウエルネスベンディング株式会社 関西支店 大阪営業所  
一般社団法人 日本臨床栄養協会認定 NR・サプリメントアドバイザー 熱中症対策アンバサダー 佐藤隆史氏

熱中症の定義、暑熱順化、具体的な対策、実際に目の前の人が熱中症になったときの対応などについて解説がありました。
肥満体型の人や暑さに慣れていない人など「熱中症弱者」へのサポートが必要。プレクーリングやアイススラリーなどを取り入れて。
正確な知識や対策を身につけて、熱中症ゼロをめざしましょうと呼びかけました。

※参加者から質問を募集。「暑熱順化ができているかの判断ポイントは?」と聞かれ、サラサラした汗が出ていなければ、まだ順化できていない可能性があると回答されていました。

安全大会2025

(4)展示会搬入搬出における安全パッケージの提案

一般社団法人 日本展示会協会 安全対策委員会 委員長
メッセフランクフルトジャパン株式会社 代表取締役社長 梶原靖志氏

「展示会がより安全な場となる環境づくりをめざし、2024年3月にガイドラインを策定、11月に一部改訂した。ガイドライン策定以降、業界の安全に対する意識は高まりつつあるが…ガイドラインについて参加者にアンケートを取ると、3割近くが「今日初めて知った」と回答。まだまだ周知しないといけない」

「ガイドライン策定の背景は、作業者だけじゃなく、主催者や出展者にも告知することでヘルメット着用率は上がるし、作業者が空調服を着るだけじゃなく、主催者が搬入・撤去作業中も空調を入れるだけで劇的に環境が改善されるから。
ガイドラインを作ることで「こう書いてあるからしませんか」って言いやすくなって、意識が高まるんじゃないかと思っている。

現場の安全向上のためにガイドラインを作ったけど、なかなか普及していかないんじゃないかと考え、啓発活動の必要があるので、安全パッケージを作った。安全パッケージとして、まずピクトデザインの看板や館内放送のための音声データ作成を実施。
ピクトデザインは、コンペをして最優秀賞を決めた」

「ヘルメット着用必須」「脚立は正しく使用」「金属ゴミの回収」の3つのピクトデザインが用意されていますが、他に欲しいものはないか会場でアンケートを実施していました。

安全宣言2025

(5)展示会開催中の震災体験から得た教訓と対策

一般社団法人 日本展示会協会 安全対策委員会 副委員長 
株式会社日経イベント・プロ 執行役員 イベント事業担当補佐 兼 企画・イベントDX推進担当補佐 安藤英賢氏

「2011年3月11日に東京ビッグサイトで展示会を開催していた。最初の揺れが発生したのが14:46。
14時台は、イベント参加者がピークの時間。まるで「関ヶ原の戦い」のように、大勢が入り口に向かって走って逃げていく中で、必死で「走らないで」と声をかけた」

「ケガをした人がいたけど、イベントには毎回看護師に参加してもらっていたので、応急手当ができた。119には何度もかけたがつながらず「ファーストエイドは主催側でしなければならない」と実感した。イベント最終日、あと数時間だったけど、現地で開催中止を決断。経営判断に関わるもので、通信環境がない中で数億円の損失になるかもしれない判断を現地でしなければいけなかった」

安藤氏は主催者の責任の重さを痛感し、会場との体制づくりなど、事前にどれだけ準備しておくかが重要と語ります。
すべての電源が落ちたときに情報を得るためにラジオを用意しておくなど、震災対策マニュアルを作成するための検討項目を20点以上提示されました。

「とにかく訓練が大切」という言葉が印象的でした。

安全標語投票コーナー
安全標語投票コーナー

(6)安全標語の表彰

現地での投票の結果、株式会社電産企画 尾臺公輔さんの「安全は声かけ・確認・思いやり」が最優秀賞に選ばれました。

(7)安全宣言

一般社団法人 日本ディスプレイ業団体連合会 大阪ディスプレイ協同組合理事
株式会社ムラヤマ 取締役 関西支社 支社長 小西善吾氏

「コロナ禍で不人気な業界になってしまった。課題が山積しているからと言えども、安全は疎かにできない。
安全なくして、発展はありえない。業界全体で取り組まなければいけないと考えている」

業界の課題に安全対策を行いながら向き合う覚悟を述べた安全宣言でした。


出展ブースの様子

協賛出展は18社21小間、いくつかのブースでお話をうかがいました。

展示ブースの配置(出典:公式Webサイト)
展示ブースの配置(出典:公式Webサイト)
ディスコム

株式会社DISCOM:身体的な負担まで考えて安全対策に貢献したい

販売事業部の阪口様にうかがいました。展示のメインは、熱中症対策アイテム。空調服と、最近主流になりつつある水冷式のベスト。そして軽量、通気性がよいといった特徴のあるヘルメットを3種類、ご紹介いただきました。

「今年から熱中症対策が義務化され、新しい商品もどんどん出ている。PRできればと思います。空調服は年々需要が高まっているけど、どうしても外気を取り込むので、気温が上がると熱風を循環させることになります。空調服を着ていても熱中症対策につながりにくいので、付属品を紹介しています。ベストタイプのインナーは、冷やして空調服の中に着ると熱を吸収してくれるので、より冷却効果がある。循環式水冷ベストは「涼しい」よりも「冷たい」です」

ヘルメットについては「安全のために必要なもの。長時間つけていると、首や肩を傷める原因になるので、軽量化することで負担を減らしたいです。身体的な負担まで考えて安全対策に貢献できれば」とお話いただきました。

キヌガワ

株式会社キヌガワ:ビジョンで注意喚起をすることを提案

熱中症対策の商品と、安全面で脚立を補助するアウトリガーを紹介されていました。
取締役営業部長 名塩様によると「商社なので幅広く展開しているが、今回は安全大会なのでニーズに沿った商品を持ってきました。脚立は転倒事故が多いので、各製造メーカーもアウトリガーなどを作って対策に乗り出しています。何に関しても「安全に現場を終われるように」と言われるので、取り扱いが増えています」

最近は熱中症対策が課題になっていて、販売数としてもかなり伸びているそうです。空調服とインナーベストを展示されていました。
品薄になり、7月末時点で早くも在庫切れのところもあるようです。

「今は熱中症対策が主力商品。あとは、ビジョンで注意喚起をすることも提案しています。施工業者さんには、会社内にビジョンを置いてひと目でわかるようにして周知してもらったらいいかなと。業界全体で安全対策がかなり言われるようになってきています。
トラックの荷積みのとき、そのまま荷台に乗ったり降りたりしている場面をよく見るけど、2t以上のトラックは昇降設備が設置義務になります。今日は、煽りの部分に引っかけて登れる小さいものを、持ってきました。これも安全対策のひとつです」


取材を終えて:展示会やイベントを支える安全への追求。何事もなく終えられてこその「成功」

華やかな展示会やイベントには大勢の来場者が詰めかけます。その舞台裏で準備や運営のため安全対策に業界全体で取り組んでいる様子がわかるとても有意義な取材でした。

現在、ふたつの大きな課題があります。猛暑が続くなかでの熱中症対策、外国人・すき間バイトの増加による不慣れな労働者による事故です。熱中症対策は個々に任せて終わりというわけにはいきません。事故を防ぐために主催者や関係者が細かいケアをしていく必要がある。そして、今後も様々な働き手が現場に入ることになるでしょう。起こりうることにそれだけ想像力を働かせることができるかが問われています。

小さなケアを怠ったために、大きな怪我や損害につながる可能性があります。それがヒューマンエラーで起こるのなら、徹底して声かけ・指導していくことで防げる事故があります。「面倒」「こっちのほうが楽」「いつもこうしている」といった気の緩みが事故を招くことになります。

体験談やヒヤリハットの共有は大切です。もし自分が携わる現場で起こったらという想像力を働かせることにつながります。実際に東日本大震災を経験した方の話は身に迫るものがありました。大きな事故や自然災害がイベント中に発生するかもしれない。「最悪の事態」は、常に想定しておくことが必要です。

私たちが安心して展示会やイベントに参加できるのも、安全を支えている方の努力と工夫があってのものです。安全に何事もなくイベントを終えられて初めて「成功」となります。MICEに関わるすべての方が安全を意識できるようになることを願います。

※取材・撮影担当:廣島


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