【VivaTech 2026】6月17日~20日にフランス・パリで開催 欧州最大のテクノロジーの祭典が10周年でみせる進化

フランスのパリで毎年開催される欧州最大規模のスタートアップとテクノロジーのイベントであるVivaTechが、2026年6月に10回目の節目を迎えます。今年は会場を拡大し、世界中から18万人の参加者を見込んでいます。最先端の人工知能技術から地球環境を保護するクリーンテックまで、未来を形作る多様なアイデアがパリに集結します。本記事では、今年の主要なテーマや見どころ、そして参加者にとっての具体的なメリットを紹介します。

節目を迎える世界的なテクノロジー祭典のいま
2016年に始まったVivaTechは、この10年間で規模を大幅に拡大してきました。2026年の参加者数は18万人に達し、170以上の国と地域から人々が集まる国際的な交流の場となっています。会場となるポルトドヴェルサイユの展示会場は、これまでの展示スペースから30パーセント拡大され、より多くの企業や技術が紹介される環境が整いました。
会場には1万4000社のスタートアップと4000人の投資家が集結します。イベントの目的は最新技術の展示にとどまらず、新しいビジネスの創出や具体的な資金調達の機会を提供することです。参加するスタートアップの75パーセントが自社の事業に最適な投資家と出会うことに成功しているというデータも、このイベントの実用性の高さを裏付けています。
今年の特別な試みとして、カントリーオブザイヤーにドイツが選ばれました。ドイツからは200社のスタートアップや多数の政府機関が参加し、過去最大規模のブースを展開します。連邦大臣も参加するこの大規模な代表団の派遣は、急激に変化する世界のテクノロジー市場において、欧州全体の技術的な独立性と競争力を高めるための重要なメッセージを含んでいます。

VivaTech 2026 開催概要
名称:VivaTech 2026(第10回記念大会)
日程:2026年6月17日から6月20日まで
特別イベント日程:2026年6月14日にシャンゼリゼ通りで一般向けのプレイベントが開催されます
開催会場:ポルトドヴェルサイユ展示場(パリ)
主催団体:Groupe Les Echos – Le ParisienおよびPublicis Groupe
見込来場者数:170カ国以上から約18万人の参加
参加スタートアップ数:約1万4000社~1万5000社
参加投資家数:約3600人~4000人が参加予定
出展企業とパートナー数:約4000社
登壇スピーカー数:450人以上の有識者
公式Webサイト https://vivatech.com/
2025年開催について紹介する記事はこちら
https://micetimes.jp/vivatech-2025/

シャンゼリゼ通りで開催される市民参加型の特別プログラム
10周年を記念する特別な取り組みとして、本会議の開幕前である6月14日の日曜日に、パリの中心部にあるシャンゼリゼ通りで無料の一般向けイベントが開催されます。この日は通りが歩行者天国となり、巨大なVivaTechのモニュメントとともに、未来の技術を直接体験できる8つの特設エリアが設けられます。
およそ15万人の来場者が予想されるこのイベントでは、35以上の革新的な技術デモンストレーションが行われます。
成層圏から地球を観察できる宇宙旅行用のカプセルや、車体に太陽光パネルを組み込んだゼロエミッション車両、そして荷物の輸送やインフラ点検を担う最新のドローンなどが展示される予定です。
人間と対話できる人型ロボットや、身体機能を補助するエクソスケルトン、空気から飲料水を生成する環境技術など、私たちの日常生活を根本から変える可能性を秘めた技術を間近で見ることができます。Googleと提携して行われる人工知能の展示では、参加型のアート表現を通じて新しい技術を創造的に活用する方法が提示されます。技術は一部の専門家だけのものではなく広く一般の市民に開かれたものであるべきだ、という主催者の強い思いがこの企画には込められています。

社会課題の解決を目指す人工知能、そしてディープテックの最前線
展示会場の核となるテーマの一つが、実用段階に入った人工知能の活用です。今回のイベントでは、人工知能をいかにして実際のビジネスや生活に役立てるかという具体的な議論が交わされます。
主要なパートナー企業の一つであるAWSは、欧州のデータ規制に対応したソブリンクラウドの展開や、人間の指示に従って自律的に作業をこなすAIエージェントの技術を披露します。AWSは2030年までにフランス国内で80万人に対してクラウドや人工知能の技術研修を行う計画を発表しており、技術の普及と人材育成の両面から産業の発展を支えています。会場では来場者の好みに合わせて人工知能が香水を作成する体験型の展示や、バスケットボールのシュート動作をリアルタイムで分析する特設コートが設置され、技術の実用性を体感できます。
ディープテックの分野では、従来型のコンピューターの計算能力をはるかに凌駕する量子コンピューターの冷却システムをIBMが公開します。また、VSORA社による自動運転向けの高効率な情報処理チップや、XPANCEO社が開発する画面のないスマートコンタクトレンズなど、ハードウェアの限界に挑む革新的な製品が多数発表されます。The Exploration Companyは月面への物資輸送を可能にする再利用可能な軌道宇宙船の開発を進めており、宇宙産業における新しい輸送の形を提案しています。
生活基盤の変革を迫る次世代モビリティの行方
交通手段の電動化や自動運転技術の進展は、私たちの移動のあり方だけでなく、都市の構造そのものを作り変えようとしています。会場では次世代のモビリティに関する展示が多数行われ、水素エネルギーの活用や高効率なバッテリー技術、そしてスマートシティの構築に向けた具体的な議論が展開されます。例えば、オーストリアのCycloTech社は、従来のプロペラとは異なる円筒形の推進システムを開発し、強風の中でも安定して飛行できる新しい形の航空機を提示しています。安全で確実な都市部における空の移動手段が、現実の選択肢として議論の俎上に載せられます。
サーバーセキュリティの最前線
デジタル化が進む社会において避けて通れないのがサイバーセキュリティの課題です。人工知能の発展は、防御側の技術を向上させる一方で、サイバー攻撃の手法も複雑化させています。システムが高速で変化し続ける中で、いかにしてデータを保護し、インフラの安全性を確保するかが重要な議題となります。欧州のミサイルシステムを牽引するMBDA社は、デジタルネットワークと迎撃ハードウェアを組み合わせた高度な防空システムを展示し、複雑化する空の脅威から重要なインフラを守る技術を公開します。技術の進化とそれに伴うリスクへの対策が、表裏一体のものとして議論されます。

持続可能な社会を築く環境技術と社会貢献事業の展開
気候変動や社会的な不平等といった地球規模の課題に対して、テクノロジーがどのように貢献できるかも重要なテーマです。会場内に設けられるインパクトビレッジでは、社会課題の解決を事業の目的に据えるスタートアップが集中的に紹介されます。
選出された10社の企業は、利益の追求と社会貢献を両立させる新しいビジネスモデルを提示しています。例えば、公共空間に無料の生理用品ディスペンサーを設置し、広告収入で運用するPeriodtや、家庭内暴力の被害者を匿名で支援し適切な窓口へとつなぐプラットフォームを提供するOpaleなどが事業を紹介します。
気候変動による不動産へのリスクを人工知能で予測するGeominnovや、災害現場で迅速に展開できる自己完結型の居住ユニットLifePodsを開発するMomentum Technologyなど、環境保護や防災の分野でも具体的な解決策が提案されています。事業の成長を通じて、人々の安全や平等を守るという社会的な価値を生み出すことを明確に示しています。
テクノロジー業界の多様性を推進する女性起業家アワード
VivaTechはテクノロジー業界における多様性の推進にも力を入れており、その象徴となるのが第8回目を迎える女性起業家向けのアワードです。ベンチャーキャピタルの資金調達において女性起業家が直面する格差を解消するため、優れた事業を展開する女性リーダーを表彰し、世界的な投資家との接点を提供しています。
今年は世界85カ国から444名の応募があり、最終候補として5社が選ばれました。自治体の脱炭素化を支援するソフトウェアを開発するドイツの企業や、微生物を活用した環境負荷の低い鉱物採掘技術に取り組む米国の企業、中古のバッテリーを再利用した住宅用蓄電システムを提案するフランスの企業など、ディープテックや環境技術の分野で女性起業家が主導する高度な事業が評価されています。女性起業家の活躍の場が特定の分野に留まらず、社会全体の重要なインフラに関わる領域へと広がっていることが確認できます。

参加者の事業成長を加速させる実践的な支援体制
ビジネスの拡大を目指す企業や起業家にとって、具体的な成果を得るための仕組みが充実していることもこのイベントの大きな特徴です。
スタートアップ向けには、効果的なプレゼンテーションの手法や投資家との対話方法を学ぶ無料のオンラインマスタークラスが事前に提供されます。会場内では、ベンチャーキャピタルやインキュベーターの担当者と直接15分間の面談ができるオフィスアワーが設けられており、事前のアプリ予約を通じて効率的に商談を進めることができます。また、投資家自身が登壇して自分たちの投資方針を起業家にアピールするリバースピッチという独自の企画も用意されており、投資家と起業家の双方が効率的に出会うことができます。
企業の技術部門の責任者やマーケティングの専門家に向けては、専用のラウンジや会議室を備えたビジネスプラザが用意されています。ここでは業界のリーダーたちが組織の拡大やイノベーションの推進に関する実践的な知見を共有するセッションが行われます。マーケティング責任者向けのサミットでは、無限に生成されるコンテンツの中でいかにしてブランドの価値を構築するかが議論され、技術責任者向けのサミットでは、システムの安全性を保ちながら事業の成長をどのように支えるかが話し合われます。専用のスマートフォンアプリを活用して自分の関心に合わせたスケジュールの作成や目的の人物との面談予約をスムーズに行うことで、広大な会場内での貴重な時間を最大限に活用できます。

新しい技術がもたらす変化を社会全体で共有する一大イベント
10周年を迎えるVivaTech 2026は、最新技術の見本市という枠組みを超えて、テクノロジーが社会にどのような影響を与え、私たちの未来をどう変えていくのかを深く考える場となっています。
企業同士の商談や資金調達の機会を創出すると同時に、シャンゼリゼ通りでの一般向けイベントを通じて、普段は技術に触れる機会の少ない人々にもイノベーションの面白さや可能性を開放しています。環境問題の解決策から人工知能の実用化、そして多様性を尊重するビジネスのあり方まで、現代社会が抱える複雑な課題に対する答えが議論されます。
世界中から集まる起業家や投資家、そして市民が直接対話し、新しいアイデアを共有して、次の10年の社会を豊かにするための具体的な行動がパリの地から始まります。ビジネスの成長と社会の発展を同時に目指すこの世界的な祭典は、参加するすべての人にとって価値のある時間となります。



