【コラム】イノベーションはステージではなく、どこで生まれる?異質を混ぜる場のデザイン【TechGALA2026】
2026年1月、名古屋で開催された「TechGALA Japan 2026」。
とあるセッションを通して浮かび上がったのは「イノベーションを起こす場はどう設計されるべきか」という問いでした。
あなたが主催するイベントやコミュニティは、同じような人ばかりが集まっていませんか。登壇者の話を聞くだけになっていませんか。場の形が変われば、生まれる効果も変わります。
ここでは「TechGALA2026」のセッションから、場のデザインについて考えました。

「伝統×革新〜新しいイノベーションのかたち」で見えた場のデザイン
TechGALA2026の初日に行われたセッション「伝統×革新〜新しいイノベーションのかたち」で、長年ベンチャーキャピタリストとして活躍するMTG Ventures 代表取締役社長の藤田豪氏が一石を投じました。

20分間膝を突き合わせてディスカッションするラウンドテーブル方式に転換
藤田氏は、人口減少が先行する秋田県を「課題解決の最前線」と捉え、県外から多数のスタートアップを連れていき、自治体や地元企業と結びつける取り組みを行っています。自治体の職員などに向けて10社、20社のスタートアップに3分から5分のプレゼン(ピッチ)を次々と行わせるイベントを実施していました。
しかし、後半になると聴く側は情報量いっぱい。集中力が切れて思考停止。質問する時間もとれず、ただ「聞いた」という事実だけが残る。これでは、本当の意味でのマッチングやイノベーションは生まれないと語ります。

そこで藤田氏が実践したのが「ラウンドテーブル方式」。一方的にプレゼンを聞くのではなく、各テーブルにスタートアップ、自治体職員、金融機関などが入り混じり、20分間膝を突き合わせて「地域の課題をどう解決するか」をディスカッションします。この形式に変えたことで、当事者意識が生まれ、具体的な実証実験や進出につながるケースが増えたといいます。
重要なのは「話の内容」ではなく「場の構造」です。ステージと客席という構造ではなく、同じテーブルを囲む構造に変える。それだけで参加者の当事者意識は大きく変わります。
焚き火を囲むように語り合うコミュニティ
立場が異なる者同士が交わる場での注意点は、どこにあるのでしょうか。

三星グループ代表の岩田氏が実践しているのが「タキビコ」。中小企業の後継者(アトツギ)とスタートアップが、焚き火を囲むようにフラットな関係で語り合う共創コミュニティです。タキビコ・キャンパス(焚き火ができる庭付きのコワーキングスペース)をメイン拠点として、様々なプロジェクトを通じて新たなクロッシング・共創を目指します。
岩田氏が「焚き火」を提唱した背景には、従来のオープンイノベーションに対する違和感がありました。 大企業とスタートアップが連携する際、どうしても「大企業がリソースを貸してあげる」「スタートアップを支援してあげる」という、垂直的な「上座・下座」の関係が生まれがちでした。また「中小企業」という言葉自体にも「助けてもらう側」という受け身のニュアンスが含まれていると岩田氏は指摘します。
焚き火を囲むように、対等な立場で語り合いたいと「タキビコ」をスタート。両者の違いは優劣ではなく時間軸の捉え方が違うだけ(長く続く伝統企業 vs 急成長を目指すスタートアップ)だと定義。重要なのは、互いへのリスペクトだと語ります。
焚き火と聞くと、自然と人が円になって座り、火を囲む光景を思い浮かべます。こうした形は、ラウンドテーブルにも通じるものがあります。対面ではなく同じ方向を向いて語り合うことで、フラットな対話が生まれやすくなるのかもしれません。

岩田氏はセッションの最後に、こう語りました。
「混ぜなきゃ危険」
スタートアップだけでは日本の経済規模を支えきれず、既存企業も今のままでは生き残れない。だからこそ、両者が交わる場が必要だというのです。
サウナに学ぶ、上座も下座もないフラットさ
Cynthialy株式会社 代表取締役CEOの國本知里氏は、AI時代のコミュニケーションを語る中で、こんな言葉を紹介しました。

「サウナには上座も下座もない」
ビジネス会議や会食では、「上座」「下座」が存在。座席配置によって、無意識のうちに上下関係(発注側と受注側、大企業とスタートアップなど)が固定化されることも少なくありません。
「たとえばサウナなら。上座も下座もなく、肩書きに関係なく人間同士としてフラットに対話ができるため、本質的な交流や変化が生まれやすい。フラットに話せる場の設計自体を変えないと、変化は生まれないのでは」と投げかけられました。
人が集まる場で価値を生み出すには、異なる立場や背景を持つ人が交わることが重要です。誰もがフラットに話せる場の設計が欠かせません。

Editor’s note:ステージ中心から混ざるMICEへ
ピッチという形式だけに頼るのではなく、登壇者と参加者、さらには参加者同士が混ざり合うような場の設計があってもよいのではないでしょうか。登壇者が一方的に話すプレゼンテーションから、ステージを降り、参加者と同じ目線でテーブルを囲む対話へ。物理的な環境を変えることで、場の空気や人の関係性、生まれる効果は大きく変わります。
ただ話を聞く場ではなく、共に考える場へ。イノベーションは、ステージの上ではなく、対話の中から生まれるのかもしれません。



