
【インタビュー】“マルチキャリア”で、ふるさと枚方を舞台に地域創生を加速させる/中岡 豪さんに聞く
かつての京都と大坂をつないだ京街道。伏見宿、淀宿の次が現在の大阪府枚方市に位置する「枚方宿(ひらかたしゅく)」です。その枚方宿にてコワーキングスペース「Community & Coworking HOOP!」を運営しながら、パーソルキャリア株式会社で正社員として働きながら「枚方宿くらわんか五六市」の事務局や株式会社197の業務に携わっている中岡豪(なかおか ごう)さんという方がいます。
会社員として働きながら、地域のまちづくりにも深く関わるその背景には、どのような思いやきっかけがあるのでしょうか。
※2024年12月30日 取材
かつての宿場町のまんなかにコワーキングスペースを開業
中岡さんは大阪市生野区で生まれ、小学生に上がる前に枚方に引っ越してきました。それから、枚方との関わりが始まります。

この場所を選んだのは「枚方宿」に魅力を感じたからです。枚方市は宿場町としての歴史があり、東海道五十七次にも数えられる場所なんです。それになぞらえ毎月第2日曜日には「枚方宿くらわんか五六市(以下:五六市)」が開催されています。
他にも枚方宿には魅力的なお店や場所があり、ポテンシャルのある街だと思いますが、十分に着目されていません。そこで、枚方宿のちょうど真ん中で、コワーキングスペース「Community & Coworking HOOP!」を始めました。2023年7月1日にオープンして、約1年半が経ちます。また、当初から五六市の事務局として携わり、微力ながらまちづくりに参画させていただいています。
Community & Coworking HOOP!
枚方の「おもしろい」が集まる場所へがコンセプト。詳しくはこちらの記事からご覧ください。
「枚方宿」
よく耳にする東海道五十三次は、53番目の宿場町が大津で、終点は京都。京都から延長された東海道は、54次が伏見、55次が淀、56次が枚方、57次が守口、そして終点は大阪 京橋。枚方は東海道56番目の宿場町なので「枚方宿」と呼ばれ、淀川の港町・商人の町として賑わってきました。東西全長約1.5km。
「枚方宿くらわんか五六市」
「五六市」は、かつての宿場町の風情を生かしながら新たなにぎわいを生み出そうと、街道沿いの住民らが中心となり平成19年(2007年)に始まった手作り市。京阪本線「枚方市」駅から「枚方公園」駅の間で行われ、約200店舗が軒を連ね、6000~8000人の方が訪れます。
引用:枚方宿くらわんか五六市 Webサイト https://www.gorokuichi.net/gorokuichi


会社員との両立は難しい。でも辞めないのは、ふるさと枚方に恩恵をもたらすため

総合人材サービス事業を展開する「パーソルキャリア株式会社(以下:パーソルキャリア)」という企業で働きながら、五六市の事務局業務やロックバンド「アンダーグラフ」のプロモート、そしてコワーキングスペースを運営しています。
以前、パーソルキャリアのメンバーとして、山形県西置賜郡飯豊町中津川地区という180人ほどの集落で、課題解決で起きている課題解決プログラムに参画したことがあります。プログラムでは廃校になった小中学校の体育館の活用や、地域の特産物を利用した商品づくりなどのテーマで有効なアイデアもたくさん出ました。しかし人手不足もあり実現には至りませんでした。「人がいないと何もできない。枚方もいずれこうなるのではないか?」と強く思うようになったきっかけです。これが約7年前の出来事です。
枚方で取り組むにも、ひとりでは厳しい。だからこそ、人が集まる場所を枚方でつくろうと思い立ちました。フルリモートで仕事ができる環境を活かして、コワーキングスペースを運営しながら会社員として仕事をする。両立するのは簡単ではないですが、妻にも手伝ってもらいながら運営しています。
「枚方市」
大阪府枚方市は、大阪府の北東部に位置し、京都府と接する都市です。人口は約39万4,000人(2024年)で、ベッドタウンとして発展しています。京阪本線やJR学研都市線が通り、大阪や京都へのアクセスが良好です。観光名所には「ひらかたパーク」や「鍵屋資料館」があり、歴史とレジャーを楽しめます。近年は商業施設や住宅地の整備が進む一方、淀川河川敷の自然豊かな環境も魅力で、市民の憩いの場となっています。
枚方市 Webサイト https://www.city.hirakata.osaka.jp/front.html

パーソルキャリアには副業申請を行っています。上司や同僚にも割と話をしますし、応援してくれていて本当に良い会社で感謝しています。
パーソルキャリアを辞めずに続けているのは、転職やキャリアというテーマはより良いまちづくりに欠かせないものと考えているからです。枚方においても、働く人たちのキャリアや中小企業の人材採用、人事全般に課題を抱える企業は少なくありません。そこでパーソルキャリアのリソースを活用することで、解決できる可能性を感じています。現に、枚方の企業でパーソルキャリアのサービスを使うようになったケースもあります。パーソルキャリアのソリューションを枚方で活用し、恩恵をもたらすことができたらと思います。
外国人留学生と地域住民を結びつける

枚方には関西外国語大学があり、海外から留学生が来ています。しかし、せっかく枚方に来たのに寮からあまり出ず、人との交流もあまり求めず帰国してしまう学生もいて、これではもったいないと思いました。そこで「出るきっかけを作りませんか」と大学側に提案をしました。枚方宿にある呼人堂さんや北村味噌本家さん、塩熊商店さんのご協力のもと、学生たちのインタビューの機会をいただき、世界への発信方法をテーマとした発表を行うなどのカリキュラムを実践しています。
最近では、僕の知らないところで地域の方と学生が繋がっていることもあります。この間も餅つき大会に留学生が呼ばれて参加していましたね。毎年10月に行われる「ふとん太鼓」(祭りの飾り山車の一種)を一緒に担いだり、地域の運動会に出ることもありました。こうした活動が、地域との結びつきを深めるきっかけになっているのかなと思います。
「ふとん太鼓」
【蒲団太鼓】は祭りの飾り山車の一種であり、四角形の巨大な「布団」を屋根部分に積み重ねているのが特徴です。江戸時代(西暦1700年前後の元禄時代)頃より、河内木綿が主産業であった河内地方で生まれ、泉州・瀬戸内海へと伝播したといわれます。
当時の枚方宿町衆の財力と気概をもって地元の氏神に「ふとん太鼓」の巡行を奉納することで宿場町の発展や安全を祈願し、また、農作物の豊作に対し感謝を込めて宿場内を盛大に練り歩いたこの神輿は、以後300年に渡り、戦争や災害による中断を経ながらも続く伝統ある祭りであり枚方市の誇れる有形文化遺産です。
私たち【枚方ふとん太鼓保存会】は、祭りを執り行う4町(三矢町・新町・岡本町・岡東町)の若手有志によって構成されており、次代へとこの祭りを継承すべく、新たな祭りの在り方の模索と情報発信を行っています。
引用:枚方ふとん太鼓保存会 Webサイト https://hutondaiko4.wixsite.com/home/blank-1
枚方出身のロックバンド「アンダーグラフ」と共にまちづくり

株式会社197は「アンダーグラフ」を使って枚方を発信しています。アンダーグラフのボーカル真戸原くんは枚方出身で、僕の同級生なんです。応援したい一心でプロモーターとして昨年から関わっています。彼らもまた、僕と同様に枚方をもっと盛り上げたい、枚方をたくさんの人たちに知ってほしいという思いが強く、昨年10月にはデビュー20周年記念ライブを枚方市総合文化芸術センターで開催しました。年の10/26も同じ会場で開催するので、ぜひみなさんに来ていただきたいです。他にも、枚方のバレーボールチーム「大阪ブルテオン」のテーマ曲も手がけていたり、ひらかたパークでMVの撮影をしたり、枚方での露出が増えてきています。
「アンダーグラフ」
1999年に地元である大阪(枚方、寝屋川)にて結成。2004年のデビュー曲「ツバサ」がCD累計売上40万枚、世代を超えて支持される名曲として大ブレイク。 2013年11月にTVアニメ「弱虫ペダル」EDテーマ「風を呼べ」をリリース、そして 2015年7月8日発売のミニアルバム「1977年生まれの僕らは」の収録曲「こころ」がNHK「みんなのうた」に決定するなど、積極的に音楽活動を行う傍ら、ワクチン普及の為に印税の寄付や、青年海外協力隊の海外視察で発展途上国に足を運ぶなど、社会支援活動への参加も行っている。 2015年10月1日には16組のアーティスト、文化人、スポーツ選手が参加する青年海外協力隊50周年イメージソング「ひとりひとつ」の作詞作曲、プロデュースをボーカル真戸原直人が手掛けている。
引用:アンダーグラフ Webサイト https://under-graph.com
「京阪沿線が、もっと好きになる」 京阪電車のイメージチューンもリリース。京阪沿線を歌った「おけいはんパレード」は枚方市はもちろん大阪、京都の沿線の方に親しまれています。
THEME OF OSAKA BLUTEON 2024年
枚方のPR大使に任命されたバレーボールチーム「大阪ブルテオン」のテーマ曲づくりにも携わっています。2025年1月4日、5日には大阪ブルテオンホームゲームにおいて、アンダーグラフが出演。こういったハーフタイムで演奏することもあります。
楽曲はこちら
https://music.youtube.com/watch?v=ovYW4PeprUM
ひらかたパークを全国の人たちに知ってもらえるよう、ミュージックビデオを撮影されたこともあります。
街が「盛り上がる」ことは、住む人がハッピーであること

2024年9月6日に枚方モールがオープンし、枚方市駅周辺が盛り上がっていますが、僕が考える「盛り上がる」は少し違います。枚方に来る人たちに楽しんでいただくのは素晴らしいことですが、何より、住んでいる人たちが一番ハッピーであることを大切にしたいと考えています。ここに住む人たちは、ここにしかないものはあり、それを大事にできるような場所づくりをしたいのです。
つまるところ、自分が年老いた時に不便な街で暮らすのは嫌だなと。今のうちに枚方が中長期的に安定できるような街にして僕自身の老後に向けて取り組んでいきたいと思っています。あと、特に枚方に住む高齢者の方々には元気はつらつでいてほしいですね。日々、忙しくてやることがいっぱいだと思えるような社会になれば良いと思っています。
真似されるくらい魅力的に!今後の展望
今はよそ者の僕が勢いづいて色んなことに手を出していますが、やはりこの街に住む方々と一緒にまちづくりをしていくことが次の段階なのかなと考えています。枚方宿に住む方々同士がつながり合い、外ともつながっていくようなそんなイメージです。
僕は正直、他の街はどうでもよくて、枚方市が良くなれば、それで良いくらいに考えています。言い方は過激ですが(笑) 枚方が良くなったのであれば、他市も真似てくれたらいいですし、まずは枚方を独り勝ちさせることが僕のテーマです。
2025年は、お金を街に落としてもらうためにどうすればいいのかを考えていきたいと思います。例えば、コワーキングスペースの利用者と一緒に新しい事業を立ち上げたり、五六市を通して面白いことができないかなどと考えているところです。決して新しいものをつくらなくても良いと思います。たとえば、美術大学の学生さんと「枚方宿×アート」プロジェクトを立ち上げたり、メタバースやバーチャル空間を活用して枚方宿を体験できたり、さまざまな機会を作りたいです。

元コンセプトは猫がいる場所にお邪魔する、保護猫譲渡会は第4日曜日 10:00~13:00

元々は「猫のいるコワーキングスペース」を立ち上げたいと考えていました。保護猫がコワーキングスペースにいて、人間がお邪魔させてもらうようなそんなスペースです。今できることとしては毎月第4日曜日の10:00〜13:00で個人の保護猫ボランティアさん協力のもと、「ねことひとお見合い会」という譲渡会を開催しています。
活動について:https://hoop-hirakata.com/cats/catsfamily/414
■Editor’s note 取材を終えて
五六市の開催は毎月第2日曜日に行われます。1月12日の五六市には両親を誘ってみました。街道に面した歴史ある家屋もその日はスペースとして開放され、訪れる人々に枚方の魅力を伝える素晴らしい取り組みだと思います。
働き方が多様化した今、ひとつの地域に根を下ろしながら活動する人もいれば、各地を転々として働く人も増えています。それぞれが交わることで、新しい価値や文化が生まれます。そのためには、地域を受け入れる人々の存在が欠かせません。中岡さんのように、この地域を良くしたいという思いを持つ人々が各地にいらっしゃることが重要だと考えています。