
【ミラノサローネ 2025】世界最大級の家具・デザイン見本市4/8~4/13開催:歴史と最新トレンド、注目のデザイナー・ブランド
ミラノサローネ(Salone del Mobile.Milano)は、毎年イタリア・ミラノで開催される世界最大規模の家具・デザイン見本市です。60年以上にわたりインテリアデザイン業界の動向をリードし、ミラノの街全体が「デザインウィーク」として盛り上がる一大イベントとなっています。その歴史や今年の見どころ、今年の注目すべきブランドやデザイナーについてご紹介します。

ミラノサローネの歴史と影響力
創設と目的:1961年に創設
ミラノサローネは、1961年にイタリアの家具輸出振興を目指し、家具メーカー13社の提案によって始まりました。初回の展示会では328社が出展し、1万2千人以上の来場者を迎える大成功を収めました。当初は国内向けの展示会としてスタートしましたが、1967年より隔年で国際見本市を開催し、1991年以降は毎年、世界各国から企業が集う国際イベントへと発展。「イタリアンデザインの輸出拠点」として誕生したサローネは、今や数十万人規模の来場者を誇る、家具・インテリア業界で最も注目される見本市となっています。
※「サローネ」はイタリア語で「部屋」「展示会」「見本市」を意味します
影響力と役割:2019年には38万人を超える来場者
ミラノサローネは単なる展示会に留まらず、その年のインテリアトレンドを世界に発信する国際プラットフォームとなりました。出展各社はこの場で最新の家具やプロダクトを発表し、デザイナー、バイヤー、メディアとの交流を通じ、翌年以降のデザインの潮流を形成していきます。2019年の開催では世界181か国から38万6千人もの来場者を記録し、史上最大規模となりました。サローネで展示された製品やアイデアは、インテリアのみならず生活空間全般のデザインに広範な影響を与えるほどになりました。

近年の動向と開催形式の変化
近年のミラノサローネは、デジタル化とサステナビリティを重視し進化。2020年、新型コロナウイルス禍で初の開催中止を余儀なくされ、デジタルプラットフォームでコミュニティの維持に努めました。2021年は通常の4月開催を延期し、建築家ステファノ・ボエリ氏のキュレーションによる特別イベント「Supersalone」(スーパーサローネ)を9月に実施。オープンレイアウトで来場者間の距離を保ちながら、実物展示による交流が復活しました。
2022年には通常開催が復帰し、60周年記念とともに、環境や社会課題への配慮が強化されました。持続可能なデザインへの取り組みや国連グローバル・コンパクトへの署名、サーキュラーエコノミーやエコ素材の活用が目立ち、建築家マリオ・クチネッラ氏の「Design with Nature」展示が話題となりました。さらに、2023年には照明部門の展示ホールが抜本的に見直され、環状動線で効率よくブースを回遊できるレイアウトが導入され、体験の質向上に努めています。

開催地ミラノ:イタリア第二の都市で最大級の経済地域を誇る。歴史とデザイン文化が息づく
ミラノはイタリア北部に位置する国際的に有名な都市で、商業、工業、金融、観光の各分野で中核をなしています。ロンバルディア州の州都として約130万人の人口を擁し、ローマに次ぐ規模を誇ります。古代から重要な拠点として発展し、ローマ帝国時代には商業地として栄え、中世はミラノ公国の首都として繁栄しました。ルネサンス期にはスフォルツァ家の下で文化が大いに花開き、スフォルツェスコ城やミラノ大聖堂(ドゥオーモ)が築かれ、航空、自動車、精密機器など先端産業の発展とともに、イタリア最大級の経済地域を形成しています。
また、ミラノはデザインと芸術の中心地としても高く評価されています。ミラノサローネの成功の背景には、開催地であるミラノ自体が長い歴史の中で培ったデザイン文化があり、毎年4月のミラノデザインウィーク期間中は、市内全域で企業やデザイナーによる展示会「フオリサローネ」が開催され、歴史と現代が融合する独自の街並みが国内外のプロフェッショナルや観光客を引き寄せています。

2025年のミラノサローネ:公式テーマは“啓発されたヒューマニズム(Enlightened Humanism)”
2025年のミラノサローネ(第63回)は、4月8日から13日まで、例年通りミラノ郊外のロー・フィエラミラノ見本市会場で開催されます。世界37か国から2,000社以上の出展が予定され、全展示面積約16万9,000㎡が既に完売しているなど、その盛況ぶりがうかがえます。昨年は来場者数約37万人(146か国)を記録しており、2025年も同等の国際色豊かな賑わいが予想されます。
今年のサローネは、主催者が掲げる「産業製造業」「持続可能な革新」「エモーショナル・インテリジェンス(感性)」というキーワードの下、「未来にふさわしい世界の構築」を目指す挑戦の場となります。公式テーマは“啓発されたヒューマニズム(Enlightened Humanism)”であり、人間中心の豊かなデザインの在り方を問い直す機会が提供されます。
さらに、新たなコミュニケーションキャンペーン「Thought for Humans.(人間のための思考)」が始動。米国人写真家ビル・ダーギン氏が手掛けるビジュアルは、人の身体と素材が融合するイメージを通じ、デザインと人間の深い関わりを表現。パンデミックを経て改めて“触れ合い”や“身体性”に注目し、日常生活の質を高めるデザインの力を訴えています。
公式Webサイト(日本語) https://www.milanosalone.com/2025/02/04/63th-salone-del-mobile-milano/
(英語) https://www.salonemilano.it/en

主要展示テーマとプログラム
2025年、奇数年開催につき、照明デザインの専門見本市「Euroluce(エウロルーチェ)」が復活します。世界27か国から300以上の照明ブランドが集い、3万2千平米超のエリアで最新の照明器具やライトアートを展示。今回、エウロルーチェ史上初となる国際照明デザイン・フォーラムが4月10・11日の2日間で開催され、「生活のための光」と「空間のための光」をテーマに、20名以上の専門家が建築と人間の幸福における光の役割を議論します。フォーラムは、建築家藤本壮介氏が設計した円形アリーナ「Forest of Space」内で行われ、ロバート・ウィルソン氏や日本の照明デザイナー面出薫氏など、業界の巨匠が登壇します。
また、ミラノ市内との連携も強化され、4月6日にはスフォルツェスコ城内の「ロンダニーニのピエタ美術館」で、ロバート・ウィルソン氏の光のインスタレーション作品「Mother」が公開されます。ミケランジェロの未完の彫刻『ロンダニーニのピエタ』を主題に、エストニアの作曲家アルヴォ・ペルトの音楽と融合した幻想的な空間演出が、5月18日まで一般公開されます。さらに、サローネ公式の前夜祭イベントはミラノ・スカラ座で開催され、ウィルソン氏がキュレーターを務める「Chair/Objets d’Opéra」と題した特別演出で、オペラ名シーンの再構成が披露されるなど、アートと音楽とのコラボレーションも見どころとなっています。
主要出展分野とトレンド
ミラノサローネでは、家具を中心に生活空間全般のデザインが展示されます。家具展示会、インテリア小物、S.Project、Workplace3.0の4部門で、1,000以上のブランドが最新コレクションを発表します。サステナブル素材と環境配慮デザインが中心テーマで、感性や物語を重視したプロダクトも増えています。主要家具メーカーや世界的デザインブランドが一堂に会し、最新トレンドを俯瞰できるのがサローネの醍醐味です。特に照明分野では、フロスやアルテミデなど大手が革新的なLED照明やスマートライティング技術を披露し、まさに「デザインの未来像」を体感できるイベントとなります。
2025年注目のブランド・デザイナー
カッシーナ(Cassina)
イタリアを代表する家具ブランド、カッシーナ。1927年創業以来、近代建築の巨匠とのコラボレーションで革新を続けています。歴史的名作の復刻や最新シリーズを発表し、今年はフィリップ・スタルク氏との協業30周年を記念する特別インスタレーションが見どころになりそうです。環境対応の取り組みも強化し、再生素材を用いた製品の展示が予定されています。
nendo(ネンド/佐藤オオキ)
2002年設立の日本発デザインスタジオnendoは、シンプルで詩的なミニマリズムが世界的評価を受けています。佐藤オオキ氏率いるnendoは、独自の発想で家具やプロダクト、インスタレーションを発表し、毎年ミラノでサプライズ展示を行うことで注目を集めています。2025年も複数のプロジェクトが密かに準備され、世界中のデザインファンの期待が高まっています。
フィリップ・スタルク(Philippe Starck)
フランス出身のスタルク氏は、1980年代から革新的なデザインで国際的な評価を得ており、「Monsieur Design」とも称されます。彼はAIを取り入れたデザインにも挑戦し、カルテルとの協業で発表した「A.I.チェア」が話題となりました。今年のサローネでは、スタルク氏関連の新作や展示、トークイベントが予定されています。
注目の日本からの出展企業・ブランド

カリモク:3会場で「Karimoku Case」「Karimoku New Standard」「MAS」の魅力を発信
カリモク家具株式会社は、「Karimoku Case」「Karimoku New Standard」「MAS」のブランドを発信します。本会場(Rho Fiera Milan)では、「A Sense of Serenity」をテーマに、最新CASE 02.3「Nagoya Sakae Cafe」を含む家具で静謐な空間を演出。さらに、街会場では、畳や暖簾を用いた合同エキシビションでKNSとMASの新作ソファやプロトタイプを展示。加えて、ECALとのコラボレーションにより生まれた木製チェアが「House of Switzerland Milan」で紹介され、2025年日本国際博覧会スイスパビリオンにも正式採用されました。
会社Webサイト https://www.karimoku.co.jp/

アダル:うねりをテーマにした新商品を発表
創業72年の株式会社アダルは、国産い草を用いたサステナブル家具ブランド《Look into Nature》を展示します。テーマは「うねり(Weavers)」。“い草”を使ったサステナブルブランド《Look into Nature》を展開。日本の自然観と伝統美を現代の家具デザインに落とし込みました。展示される新作「HAORI」は、和装の着物上着をモチーフにし、柔らかな包容力と空間創出を実現。日本庭園の趣を取り入れたテーブルアイテム「MONN」は、インテリアとエクステリアの境界を曖昧にすることで、どんな空間にも調和するデザインです。また、「NAGARE」は、流れる水やスペイン伝統のブラインドから着想を得たデザインで、い草の持つ自然な曲線美を最大限に活かし、壁面に美しい立体感と模様を表現します。
アダル ECサイト https://adal-online.shop/

タカショーデジテック:屋外照明ブランド『yomosugara』を展示、和の照明を再定義する新ブランド
株式会社タカショーデジテックと英国デザインスタジオ Tangentは、日本発屋外照明ブランド『yomosugara』を初公開します。展示はレオナルド・ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館内「Cavallerizze」エリアで行われ、和の灯りを感じさせる「Shobu」「Suiren」「Kodama」などの製品が紹介されます。夕暮れや月明かりのような柔らかい光で、海外のデザイン関係者に日本独自の照明美を伝える狙いです。
会社Webサイト https://takasho-digitec.jp/

杉山製作所:職人の手仕事が生み出す、ミニマルな「鉄家具」
岐阜県関市の株式会社杉山製作所は、1962年創業以来培ってきた伝統の鍛冶技術と高い加工力を背景に、ミニマルな「鉄家具」ブランド「SUGIYAMA」として3年連続で出展します。展示テーマは「The Beauty of Handicraft(手仕事の美)」。鉄の特性を最大限に引き出すため、熟練の鉄職人が「切る」「曲げる」「たたく」「つなぐ」「けずる」という工程を重ね、手描きのスケッチから生まれた新作チェアをはじめ、機能性と美しさが調和した逸品を展示します。デザイナーと職人が一体となって創り上げた製品は、無機質な鉄に温かみを与え、日常空間に特別な価値を提供します。
会社Webサイト https://kebin.jp/