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イベントの取材・レポート

【TGS2024/レポート2】東京ゲームショウ2024/アジア各国ブースから、グローバルゲーム市場の”今”を見る

テーマは「ゲームで世界に先駆けろ。」

今年の東京ゲームショウ2024(TGS2024)は「ゲームで世界に先駆けろ。」をテーマに、出展も来場もグローバル化を推進、展示会場を最大・最適化、そして情報発信をより広く、より深くを特徴に開催されました。国内外のプレス、およびインフルエンサーを誘致し、プロモーションを展開。世界各地域を代表するインフルエンサーを公募して、グローバルでの情報拡散を行いました。


東京ゲームショウ広報事務局提供

ゲームが愛され、育まれてきた日本での一大ゲームショウ

コンピューターゲームの歴史。多くの名ゲーム機と優れた作品を生んだ日本

映画やアートと同様に、国境も人種も年齢も超えて楽しまれ、愛されている「コンピューターゲーム(ビデオゲーム)」。
1950年代に画面に映して遊べるコンピューターゲームが生まれ、1972年11月にアメリカ・アタリ社『ポン』(PONG)が家庭用ゲーム機として大ヒットします。

日本では1978年、タイトーから業務用『スペースインベーダー』が発売され、社会的な流行となります。1980年代にかけて『パックマン』『ギャラクシアン』『ゼビウス』をリリースしたナムコ、『ハングオン』『アウトラン』『スペースハリアー』といった数々の体感ゲームでゲームセンターをアミューズメントパークに変えたセガ(現セガサミー)、ほかコナミ、カプコンといった今もゲーム業界を担うメーカーが多数生まれました。

1983年には任天堂から家庭用ゲーム機として「ファミリーコンピュータ」が発売。日本では家庭用ゲーム機として初めての本格的な成功を収め、家庭用ゲーム機時代が幕開けます。国内市場では苦戦を強いられたセガのゲーム機も、16ビットの「GENESIS」は北米市場では任天堂と互角のシェアを獲得します。1994年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売された「PlayStation」は初代から販売が好調で次世代ハードを牽引しました。家から持ち出せる「GAMEBOY」(ゲームボーイ)のような携帯ゲーム機はテレビから離れ、いつでも遊べるひとり1台のゲーム機を持てる所有感を満たしてくれました。やがて、携帯電話、スマートフォンで遊べるゲームが増え、ゲームはインターネットでつながる時代になっていきます。

50年近いゲームの歴史で、世界で1億台以上販売した家庭用ゲーム機のメーカーはすべて日本です。マリオやゼルダの伝説、ポケモン、モンスターハンター、ストリートファイターなど今も人気のタイトルが、日本のゲームメーカーから数多くリリースされました。
ビッグタイトル、世界的なヒット作品という面ではここ10年以上、海外のタイトルやメーカーの台頭が目立ちます。しかし、間違いなく日本はコンピューターゲーム文化の大切な一極を担う地域です。


アジア各国のブースを巡り、各国のゲーム市場、開発について知る

日本と近い”世界”であるアジア地域。ゲームに限らず、映画、コミック(マンガ)、アニメなどの分野でもよきライバルでもあり、刺激を与え合う存在です。ゲーム市場においてはアジアの国や地域はどのような存在なのでしょうか、ブースを取材してきました。

韓国ブース「KOREA PAVILION」:政府の後押しもありKコンテンツのひとつとして成長中

KOREAの大きなディスプレイが目立つ、大きなブース。韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が支援する25社が出展をしていました。

お話をうかがったのは『V.E.D.A』の開発会社、Tripearl GamesのCEO Manson Jeong(정만손)さんです。
韓国のゲームということでスマホゲームなのかと思いきや、コンソール向け(ゲームで遊ぶために、SwitchやPlayStationなどのゲーム機器を必要とする)の大作ゲームでした。

Tripearl GamesのCEO Manson Jeong(정만손)さん

■韓国ゲームの特徴はどういったものですか
「3Dのアートワークが得意だと思います。スマホ向けだけではなく。コンソール向けにもゲームが揃ってきています。しかし、ストーリーテリングをともなうものは苦手かもしれません」

■苦手にはどのように向き合っていますか
「最近では映画の経験がある方がゲーム開発に携わるようになっていま。韓国政府の応援も力が入るようになりました。これから名作・大作も出てくると思います」

■『V.E.D.A』について教えてください
「ソウルライクなゲームにローグライトを組み合わせた”ソウルライト(戦闘✕成長)”ゲームです。一般的にこのジャンルのゲームは難しくて、初心者の参加を阻んでしまうことがあります。私はこのジャンルにおける入門編を作りたいと考えました。ソウルライクジャンルのトレーニングゲームという位置づけで遊んでいただけます」

Tripearl Gamesは「世界中の誰でもストレスを解消できるゲームを作ろう」という目標を持ち、平均20年のベテランゲーム開発者が集まったインディーゲーム開発会社です。

Tripearl Games
https://www.tripearlgames.com/

V.E.D.A In Game Teaser – [GAMESCOM 2024]

TGS2024ではインディーゲームとしてハピネットブースや、釜山、京畿道・ソウルブースなど様々な場所で韓国ゲームに触れることができました。
韓国ゲームといえば2024年1月にSteam(PC)、9月にSwitch版が発売された推理ゲーム『未解決事件は終わらせないといけないから』を思い浮かべる人が多いのでは。映画やドラマを見ていても日本と韓国の警察や町並みなどは似ていて、理解しやすかったりしますが、ゲームでも同じかもしれません。本作はユニークなゲームデザインでヒットしました。インディーゲームを販売するプラットフォームが普及し、アイデア次第で、国境を越えてヒットする作品が生まれる時代。ブースでも視点を変えたユニークなデザインの作品が目につきました。世界で売ることを目指して開発が進む韓国発の作品が、今後も日本で大ヒットすることでしょう。


タイ(DITP)ブース:タイ国政府の支援で初の大型ブースを展開

タイブースにもたくさんの作品が展示されていました。タイ国商務省国際貿易振興局の取りまとめにより13社が出展されたそうです。突然のお願いにも関わらず、出展の背景とタイのゲーム事情についてお話いただけました。

お話をうかがった方
・タイ国大使館 商務参事官事務所 商務公使 チャンタパット・パンジャマーノンさん
・同 商務公使参事官 山本 ティッパワンさん
・FAIR PLAY STUDIOS CO., LTD. CEO/CFO カチャイン・プッティワラウットさん
・BUGBLIO STUDIO CO., LTD. CEO メイティー・チャウイプーさん

■出展の背景を教えてください
「日本の市場は世界のベスト5に入り無視できない市場です。今回、政府の商務省が支援して初めてこのような大きなブースで出展できました」

■出展してみて、どのようなことを感じましたか
「日本では様々な世代の方がゲームを楽しんでいる。自分たちがこの市場で通用するか純粋に知りたいと思っています。ほかの出展者や作品を見て、多くのアイデアを得ることもできました」

■タイのゲームにはどのような特徴がありますか、タイの方が作るゲームの特徴でも構いません
「タイの開発者は繊細な作業が得意です。グラフィックなどにそれが表れると思います。作品として発表して、どんどん知ってほしいです」

■ほかにも何か日本の方に伝えたいことがあれば教えてください
「私たちは”スーパーニンテンドー”(海外版のスーパーファミコン)で育ちました。いつか、同じように自分たちが作ったゲームで育つ子どもがいるようになればうれしい。ゲームは日本語版をつくり、ローカライズしています。日本の方にも遊んでもらいたいです」

BUGBLIO STUDIOZ(バグブリオ・スタジオ)『LIGHTS UP!』

■こんなゲームが展示されていました

FAIR PLAY STUDIOS(フェア・プレイ・スタジオズ)開発の『Nightmare Circus』で少し遊びました。悪夢の領域に閉じ込められた操り人形師となって、人形を操ります。見下ろし型の画面を探索しながら進んでいきます。操り人形らしい「糸」を使ったアクションが特徴です。ゲームデザインはシンプルで、慣れると簡単な操作で様々なことができる、ジワジワを面白くなってくるタイプのゲームだと感じました。少しパズル要素を含んでいるのは、日本のゲームにも似たデザインです。

BUGBLIO STUDIOZ(バグブリオ・スタジオ)は『LIGHTS UP!』を展示。可愛らしいキャラクターが画面狭しとちょこまかと動き回る、こちらも見下ろし型の画面のアクションゲーム。ローグライトゲーム※ であり、これはアジア各国のブースでよく見られたジャンルでした。

※ローグライトゲームとは「遊ぶたびに地図や要素が変更され、何度も繰り返し遊べるゲーム、ローグライクゲーム」の「ライト」版、つまりローグライクの要素が薄いものです。

タイのゲーム市場は10%以上の高い成長率で成長を続けており、ゲームファンも拡大しています。東南アジア有数の大きな市場です。開発者も増えていますが、流通する作品の多くは海外のゲームとなっています。
昔の日本ではゲームファンが世間の偏見にさらされたように、かつてのタイもそうでした。しかし、ゲームを取り巻く環境が変わってきていて、若い優秀なゲームクリエイターが増えています。「ゲームクリエイターはクール」だそうです。

今回、お話をした開発者の方は根っからのゲームファンだと感じました。私が任天堂がある京都から来たということや、ゲームについての知識があると知って、喜んでくださいました。展示作品を見るとゲームは長いストーリーを楽しむものよりも、ステージクリアを目指す作品や、短い時間で区切りがあるようなものが多い印象です。コンソール向けよりもスマホ向けゲームの人気が高いタイ市場を反映しているのかもしれません。


マレーシアブース:多民族国家が生み出すゲームとは…

マレーシアは東南アジアに位置する多民族国家で、半島部(マレー半島)とボルネオ島北部に分かれています。首都はクアラルンプール。宗教はイスラム教が主流ですが、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教なども信仰されています。民族的にはマレー系、華人系、インド系などが共存し、独特な文化的多様性を持っています。
主要な地域が海に囲まれていて、海洋国家的な側面もある国です。

そんなマレーシアでもゲームは近年、大人気です。スマホの普及にともない、モバイルゲームが人気で、eスポーツも非常に盛んです。インディーゲームの開発も多くなっています。
マレーシア政府は、2024年にeスポーツやゲームに関する予算を割り当てました。海外の企業がマレーシアに拠点を置くことを期待しての予算です。

マレーシアブースでは10社ほどが出展されていました。ブースでは「RCADE STUDIO」の方にお話をうかがいました。
展示されていたのは『XEROES』(ゼーロース)というバトルロイヤル格闘ゲームです。

■こちらはどんなゲームなんですか
「子どもでも楽しめるバトルアクションゲームです。各大陸の代表からキャラクターを選べて、フィールドも世界各地を舞台にしたような設定です。(子どもの方が遊ぶことを想定して)エデュケーショナルな要素があります」

■どんなことに注意してゲームを制作していますか
「子どもが遊ぶので、残虐な表現を入れていません。誰でも遊べるゲームにしています」

2020年にできたスタジオということで、歴史は浅いがこれからもさらによいゲームを作っていきたいと熱意を伝えていただきました。

実際に遊んでみると、スマブラのような感触のゲームだと感じました。操作系はシンプルなのですが、タイミングがシビアでなかなかうまくこちらの攻撃が当たらず、相手の攻撃を防げません。おそらくゲームに慣れていくことで上達を実感できるのだろうと思いました。
キャラクターデザインは可愛く女性や子どもたちにも好まれそうです。お話にあったように、残虐な表現は一切なく、誰でも安心して遊べそうです。他の作品も拝見しましたが、誰にでも遊びやすいというのは、ひとつの共通項かもしれません。


TGS広報事務局提供

アジアの開発者から尊敬と憧れをもたれる日本のゲームと開発者

どのブースでも日本のゲーム市場の魅力と、幼い頃からゲームに触れて育ったファンがたくさんいることが羨ましいということ、日本で自分たちが通用するか試したいこと、いずれは日本のゲームのように世界中で親しまれるものを作りたいとお聞きしました。リップサービスだとしてもうれしい限りです。開発者でもない私がそう思うのですから、日本の関係者はきっともっとうれしいのではないでしょうか。

日本の野球少年がアメリカ・メジャーリーグを目指すように、海外のゲーム少年・少女が日本のゲーム市場を目指している。開発者が手塩にかけたゲーム作品について嬉々として説明してくださる様子も、うれしく感じました。
私が(任天堂が本社を置く)京都出身と聞くだけで友達になれてしまう。「スマブラみたいですね」と日本語で言えばなぜかマレーシアのゲーム開発者に伝わっている。まさに「ゲームが国境を越える」体験ができました。

ゲームそのものは比較的シンプルなもので、ストーリーテリングを必要としないステージクリア型のゲーム、アクションの楽しさを味わうもの、オンラインなどで複数人で遊ぶものが好まれているようでした。また、その国らしい、という要素もそれほどなくて、ファンタジーやSF要素のあるものが目立ちます。ゲーム市場が成長・成熟していくことで、重厚なストーリーを楽しむ、壮大なゲームや自国の文化や歴史を背景にした作品が世界市場に向けて放たれるようになるかもしれません。

関係者向けの見本市から、ゲームファンのためのゲームショウへ

2023年12月、世界最大級のゲームイベントとされる「E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)」が終了すると発表されました。トレードショー、見本市の国であるアメリカでのゲーム見本市終了は大きな衝撃でした。すでに長い歴史を持つに至ったコンピューターゲームの見本市は求められる役割が変わりつつあります。

各メーカーがインターネットで独自に新作タイトルやゲーム機の発表を行うケースが増えています。例年、TGSも多数の来場者が集まり、その関心の高さがうかがえますが、人気タイトルの試遊は長蛇の列。会場の混雑も大きなものとなっています。ゲームの試遊はインターネット経由で体験版を配信すれば事足ります。その評判もSNSで拡散する時代です。

日本でもリアルの見本市は大きな転換点を迎えているのかもしれません。今回お話を聞いたアジア各国のゲーム開発者と触れ合う、普段手にしない作品に触れる機会というのはオンラインではなかなか実現しません。偶然の出会いが生み出す「リアル」の場の意味、人やものが「集う」ことの価値がなくなることはありません。

ゲームを愛し、一緒にゲーム文化を育んだファンが多くいるのが日本のマーケットです。ゲーム関係者のための見本市としてだけではなく、ゲームファンのための一大ゲームショウへと姿を変えつつある東京ゲームショウは、メーカーからのファンサービスの場であるように感じました。開発者にとってもファンの期待や反応が見られる、貴重な機会となっていることでしょう。
ゲームを愛するファンが大手を振って集える場である東京ゲームショウ、どうか日本ならではの一大ゲームショウとして長く続いていくことを願ってやみません。

株式会社イザン 井上


そのほかのブースを見ておきましょう

香港ブース:タイやマレーシア同様に多くのゲームが並んでいました

ドイツブース:大きなゲーム市場を持つドイツ。アジアブースのサイバーな装飾ではなく、シンプルな装飾はまさにドイツの機能美です

中国広州館:ブースにあまり人がいなくて少々さびしい様子。やや近寄りづらい雰囲気で、もっとゲストフレンドリーだとにぎわったかもしれません

Qiddiyaブース:大きくて派手なブース。Qiddiyaは「キディヤ・シティ」を建設しているサウジアラビアのプロジェクトです。ドラゴンボールのテーマパークプロジェクトで日本では有名になりました。サウジアラビアで進む3大ギガプロジェクトのひとつ。

サイバーパンクな世界が展開されていました。お姉さんを撮ろうとお願いしたら、なぜかお兄さんが俺が俺が、とメインに収まってしまった写真がこれです。

Qiddiya https://qiddiya.com/


東京ゲームショウ特集記事

レポート1 ビジネスデイの様子

東京ゲームショウ2024 開催概要                 

名称 :東京ゲームショウ2024(TOKYO GAME SHOW 2024)
主催 :一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)
共催 :株式会社日経BP、株式会社電通
会期 :2024年9月26日(木) ビジネスデイ 10:00~17:00
   2024年9月27日(金) ビジネスデイ 10:00~17:00
   2024年9月28日(土) 一般公開日 10:00~17:00
   2024年9月29日(日) 一般公開日 9:30~16:30
会場:幕張メッセ(千葉市美浜区)

小間数:3,252小間(過去最多)。
出展タイトル数:2,850タイトル(過去最多)。
リアル出展数は1034社と過去最多規模。海外からは535社。アジア・オセアニアから16カ国・地域、中東・アフリカ5カ国・地域、ヨーロッパ19カ国・地域、北中南米4カ国・地域。スマホ、PC、家庭用ゲーム機といったプラットフォームに向けた、多くの多様なゲームタイトルが揃いました。VRゲーム、Web3・ブロックチェーンゲームはもちろん、インディーゲームコーナーにも200以上のタイトルが並びます。

MCIEインサイト:一気読みで振り返り!

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