【ツーリズムEXPOジャパン2026特集】主催3団体トップ鼎談 「進化する旅のカタチ」発信
※この記事は観光経済新聞の提供によるものです。
旅の総合イベント「ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2026」が9月24~27日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される。旅行者の価値観の変化、テクノロジーの進化を踏まえ、旅のスタイルが多様化する中、今年のツーリズムEXPOジャパンは、「進化する旅のカタチ」をテーマに掲げた。開幕を前に、主催3団体のトップ、日本旅行業協会(JATA)の原優二会長、日本観光振興協会(日観振)の最明仁理事長、日本政府観光局(JNTO)の蒲生篤実理事長にTEJの意義、観光の動向などについて語り合っていただいた。
多様な旅提案、関係人口も拡大
――(司会=本社・向野悟)今年のツーリズムEXPOジャパン(TEJ)のテーマは「進化する旅のカタチ」。旅行市場の現状、観光産業の動きについてどう捉えていますか。
原会長 インバウンドは非常に好調、国内旅行は堅調、それに比べてアウトバウンドはいまだコロナ前の水準に戻っていない。基本的なトレンドは、昨年からあまり変わっていない。
インバウンドは伸びが鈍化した感はあるが、中国の団体旅行が減少している中でも、全体としては好調に推移している印象だ。日本人の国内旅行も消費額で見ると、2025年は26.8兆円と統計上過去最高で好調といえる。
その一方で、アウトバウンドは回復の遅れが続いている。国の施策でパスポート(旅券)の取得費用が引き下げられ、これから良い方向に向かうと期待しているが、国内外の物価高や円安、さらに中東情勢が需要回復にブレーキをかけている。戦争が行われるような情勢下で観光を振興することは難しい。一日も早く平和な世界になってほしい。
「旅のカタチ」という観点では、いずれの旅行分野でも、団体旅行からFIT(個人旅行)へのシフトがさらに進んでいる。目的型の旅行が増え、複数の観光地を周遊するより、ピンポイントで特定の地域を訪れ、旅行者それぞれの目的を達成するような旅行形態が多くなっている。旅行産業においてもコロナ禍を契機にビジネスモデルが変わってきた。コモディティ化した商品の価格競争は下火になり、高付加価値商品が前面に出てきた。高付加価値化の流れは、旅行会社にとっては望ましい状態だ。

――日本人の国内旅行や観光地域づくりの動きは。
最明理事長 国内においては、一昨年の能登半島地震に続き、今年の夏も熊本地震、各地の豪雨など大きな自然災害が発生した。甚大な被害で観光分野への影響も大きく、政府の支援施策はもとより、産業界としても需要回復、産業復興に貢献していく必要がある。
夏の旅行シーズンが終わったところだが、この夏も「酷暑」が話題になった。気温の高さも旅行需要に大きな影響を与える要因となっている。国内の観光市場は全体としては堅調といわれるが、旅行者の価値観や旅行スタイルの変化にとどまらず、自然災害や気候の変化にも左右され、地域によって好調、不調が大きく分かれるといった印象を持っている。
「旅のカタチ」ということでは、われわれ3団体の主催で、優れた観光の取り組みを表彰し、TEJ内で授与式を行う「第10回ジャパン・ツーリズム・アワード」に、今回272件という過去最高の応募があった。その受賞案件を見ると、地域づくり、人づくり、コンテンツづくりを重視した取り組みが高い評価を受けたことが分かる。これまで地域や観光産業は、交流人口を増やすことに躍起になってきたが、今は交流人口だけではなく、関係人口をしっかりつくり、そして定住人口につなげていこうという考えが主流になってきた。そうした流れを生む「旅のカタチ」が今後の観光の基礎になっていく。

――訪日外国人旅行者数は2025年に、過去最高の4268万人を記録しました。
蒲生理事長 難しい国際情勢下にはあるが、そうした状況にありながらも、訪日旅行市場はおおむね堅調に推移していると考えている。ただ、持続可能性という観点から見ると、いろいろな環境の変化、条件の変化に慎重に対応していく必要がある。
訪日旅行の大きな変化の一つは市場の多様化。コロナ禍以前は、東アジアに依存してきた面があるが、欧米豪、東南アジア、インドなどさまざまな国・地域から日本を訪れてもらえるようになった。特定の市場が落ち込んでも、他の複数の市場が全体を補ってくれる状況は大変心強い。
インバウンド好調の要因は円安だと指摘されることがあるが、これだけ多様な国・地域の旅行者が日本を訪れ、日本でお金を使ってくれる要因は為替の影響だけではない。JNTOや自治体、産業界が継続して実施してきたプロモーションの成果であり、さまざまな国・地域で、日本に対する関心が高まっていることを反映していると捉えている。

旅の総合イベントとして成長
――今年のTEJのポイントを教えてください。
原会長 昨年は愛知での開催だったので、2年ぶりに東京での開催となる。今回は、会場となる東京ビッグサイトのリノベーションの関係があり、変則的なホール仕様で使用面積も例年の8割程度なので、出展者の反応を心配したが、多くの出展申し込みがあった。一時、30団体ほどがキャンセル待ちの状態だったが、会場レイアウトを見直すことにより、希望者全員に出展していただくことができた。出展総数は1400小間を超えており、国内46都道府県、海外70カ国・地域を超える参加があり、全体の約6割が国内から、約4割が海外からの出展となる。来場者数の目標は、2024年の東京開催と同じ18万人を目指していく。
今回のTEJのポイントとしては大きく四つある。
一つ目は「観光DXの推進」。最新のデジタル技術やAI(人工知能)をいかに旅行、観光産業に取り入れていくかは業界全体の課題だ。シンポジウムやセミナー、同時開催の「トラベルソリューション展2026」を通じて観光DXの方向性を探っていきたい。
二つ目は「高付加価値化への取り組み強化」。テーマ別に新たな旅のスタイルを提案する展示エリアを再編し、今回は「TEJコレクション」というエリアを新設する。従来のスポーツツーリズム、星空ツーリズム、コンテンツツーリズム、クルーズ、アドベンチャーツーリズムなどのほか、新たに「ウェルネスツーリズム」と「ガストロノミーツーリズム」を追加した。目的型旅行の魅力、各地の多彩な観光資源を紹介していく。
三つ目は「多様化する旅の提案」。観光産業、観光地域は、多様化する「旅のカタチ」に対応する必要がある。今回のTEJのウェブサイトやポスターに使用しているキービジュアルは、従来のように旅行者の姿を表現したものではなく、多様な旅を提案し、旅行者を歓迎する観光産業、観光地の側を表現するものにした。提案する側、受け入れ側の視点を意識した情報発信も強化したい。
そして四つ目は、横浜市で来年開催される「2027年国際園芸博覧会」(GREEN×EXPO2027)の情報発信だ。博覧会協会からの出展もあるので、われわれとしても成功への機運醸成など、開幕に向けて全力で応援していきたい。
――TEJは2014年に初開催され、コロナ禍などを乗り越えて今回に至っています。イベントとしての成熟度をどう考えていますか。
原会長 TEJは、JATAが主催していた海外旅行博「JATA旅博」と、日観振が主催していた国内旅行博「旅フェア日本」を統合し、さらにJNTOを主催団体に加え、「VISIT JAPAN トラベル & MICEマート」(VJTM)を合同開催する形にして発展してきた。インバウンドの拡大もあり、観光産業への期待感が高まって、さまざまな企業がTEJに参画するようになった。総合的なイベントに成長してきたと考えている。
TEJは、海外の旅行見本市などと比べると、とてもユニークだ。海外の見本市は、BtoBの商談に焦点が当てられたものが多い。もちろんTEJでも商談はしっかり行っているが、併せてBtoCで旅行の楽しさを発信し、旅の機運を醸成することを大きな目的としている。加えて、国内旅行も、アウトバウンドも、インバウンドも網羅した総合的なイベントとして充実してきている。

最明理事長 毎年、TEJの会場で一般来場者、業界関係者の表情を見ているが、本当に皆さんが楽しそうだ。活気がある素晴らしい総合イベントになってきている。訪れたことがないという観光関係者には、ぜひご来場いただきたい。商談やコミュニケーションを通じて、新たな商品造成、観光地域づくりのヒントが得られるはずだ。
また、TEJでは2023年の開催から、高校生以下に加えて、大学生・専門学校生の入場を無料にしている。これは本当によい取り組みで、旅行需要の将来という面でも、観光産業の人材確保・育成という面でもとても重要だ。ぜひ多くの学生に足を運んでもらいたい。
人材ということでは、TEJにおいて日観振は、「働き手に選ばれる観光産業へ」というテーマでシンポジウムを開催する。日観振が今年6月に発表した観光産業の中長期ビジョンを基にしたシンポジウムで、策定検討会の座長を務めていただいた早稲田大学大学院経営管理研究科研究科長・教授の池上重輔氏の基調講演のほか、策定検討会のメンバーである観光関係者が登壇するパネルディスカッションを行う。このビジョンには、若い人たちに観光産業の将来性ややりがいを伝えるメッセージも盛り込んでいる。会場が若い人たちの熱気で包まれるようなシンポジウムにしたい。
訪日旅行商談会「VJTM」も合同開催
――JNTOが主催するVJTMのポイントは。
蒲生理事長 VJTMは、訪日旅行、訪日MICEを取り扱う世界の旅行会社などをバイヤーとした国内最大のインバウンド商談会で、9月24~26日、TEJと同じ東京ビッグサイトで合同開催される。今回は海外バイヤー約280社、国内セラー約350社・団体が参加する予定だ。
日本のインバウンドに携わる団体・事業者、地域などのセラーと行う商談は、基本的には事前マッチング制。セラーとバイヤー双方でブースを訪問するフリー商談時間も設定する。昨年に引き続き、3日間にわたって商談を行うフルの出展枠だけでなく、1.5日間のハーフ枠を設けており、さまざまな団体や自治体、事業者に参加しやすい環境を整えている。参加する海外バイヤーも増えており、商談を通じた成約の増加が期待される。エクスカーションやファムトリップについても、例年よりコース数を増やし、視察・体験内容もブラッシュアップした。
VJTM以外にも、TEJでJNTO主催のシンポジウムが開催される。テーマは「『GREEN×EXPO2027』を契機としたインバウンドプロモーションと双方向交流」。国が主導する大型博覧会なので、JNTOとしてもインバウンドの観点から盛り上げていく。

日本の観光が抱える課題と、3団体の取り組み
――TEJでは観光大臣会合、ツーリズム・プロフェッショナル・セミナー、テーマ別シンポジウムなどを通じ、観光の持続可能な発展について考えます。日本の観光が抱える課題、それに対する各団体の取り組みを教えてください。
双方向交流の拡大が重要
原会長 今年3月に第5次観光立国推進基本計画が閣議決定され、施策の柱には、インバウンド誘客、国内交流拡大と共に、アウトバウンド拡大が盛り込まれた。2030年のアウトバウンド旅行者数を2019年に記録した2008万人を超える数値にするという目標も示された。JATAが長年訴えてきた双方向交流、ツーウェイ・ツーリズムの重要性が基本計画に位置づけられたことをうれしく思っている。その分、JATAの責任も大きい。JATAが展開している「もっと!海外へ」キャンペーンなどを通じてアウトバウンドを活性化させていく。
インバウンドでは地方誘客が課題だ。JATAでは、ゴールデンルートに加えて地方への周遊を促進するプロジェクトを開始する。JNTOや日観振の協力も得て、3年程度の複数年計画で段階的に地方への誘客を進めたい。また、国内旅行では、平日への需要分散につながる「ラーケーション」や「ポジティブ・オフ」を推進し、市場の維持、拡大に努めていく。
JATAとしては、アウトバウンド、インバウンド、国内旅行、それぞれにおいて、旅行会社が持つ機能、強みを発揮することで、高付加価値な旅行商品を提案するなど、旅行産業の持続的な発展につなげていく。
働き手に選ばれる産業へ
最明理事長 日観振では、DMO(観光地域づくり法人)の位置づけをしっかりと定めることが重要課題だと考えている。法制化の是非を含め、関係者で議論を深め、観光庁に具体的な対応を働き掛けていきたい。観光庁がDMOの登録制度を開始したのは2015年11月。日本のDMOが誕生して10年以上がたつが、今もプロモーションを主体とした組織にとどまっているところが多い。DMO本来の役割を果たせていないのが現状だ。
米国をはじめとする海外では、DMOは地域に住む人々のための組織という考え方が主流だ。観光客の誘致、受け入れ態勢の整備、満足度の向上にとどまらず、地域住民に観光の重要性を周知し、理解を得ながら観光地域づくりを進めていく。日本のDMOもそうした役割をきちんと果たしていくべきだ。
日本国内でも先進的なDMOが出てきている。日観振では、国内外のそうした優れた取り組みを全国のDMO、地域で共有し、全体の底上げにつながるよう、モデル事業、人材育成、研修プログラム、デジタルプラットフォームなどの事業を展開している。DMOの位置づけを明確化し、さらに取り組みを強化したい。

訪日市場の多様化に対応
蒲生理事長 インバウンドについては、国際情勢などの影響を受けるが、先ほどお話ししたような市場の多様化、つまりさまざまな国・地域の旅行者から日本が旅行先として選ばれる環境をつくっていくことが重要だ。国・地域ごとの特性、ニーズを適切に把握し、日本の魅力をしっかりPRしていけば、インバウンドは今後も安定した成長が期待されると考えている。
一方でインバウンドを支える観光産業の現場においては、DXなどをしっかり進め、生産性を上げていく必要がある。生産性向上が観光産業で働いている方々に還元される良い環境をつくり、その中でさまざまな国・地域の旅行者に価値ある魅力的なサービスを提供していく。そうしたインバウンドを支える観光産業全体の持続的な仕組みを強化していくべきだ。関係機関が連携して取り組んでいく必要がある。
また、地方誘客の拡大については、観光庁、地方運輸局、広域連携DMOなどと連携し、「グローバルキャンペーン」などのプロモーションをしっかり展開していく。オーバーツーリズムの未然防止・抑制についても、観光庁が取り組みを進めており、インバウンド6千万人に向けて連携して取り組んでいきたい。
最明理事長 地方誘客の課題は、プロモーションや宿泊のキャパシティだけではなく、交通にあるのではないか。日本は地方の奥深くまで魅力的なコンテンツが多く存在しているが、そこに旅行者をどう届けるか。交通「空白」地域の解消や地方空港のさらなる活用について、観光の視点からもっと本腰を入れて考えるべきだ。国際観光旅客税という大きな財源ができた今、それを活用して地域の課題を解決できれば、日本全体の発展につながる。
原会長 地方空港の活用に関してはチャーター便の活用が鍵だ。チャーター便は今や双方向で利用できる仕組みで、それを定期便化する流れをつくることができる。直行便のない国・地域が日本への路線開設を求めている例もある。TEJにおける商談などの機会も生かし、地方空港の活用、双方向のデスティネーション開発を進める必要がある。
蒲生理事長 国際観光旅客税財源の話が出たが、インバウンド振興に関連して、さまざまな方から、さまざまな声がJNTOにも寄せられる。国際観光旅客税の使途は、あくまで政府が決定するものだが、予算の有効活用はもちろん、その成果を外部にしっかりPRする必要性も高まっていると感じている。
最明理事長 オーバーツーリズムに関していえば、私は、地域住民の側に立って観光の仕組みや受け入れ態勢を構築するDMOの責任を「スチュワードシップ」と表現している。その一方に、旅先の自然や文化、住民の暮らしを大切にする旅行者の責任として「ツーリストシップ」がある。インバウンド6千万人の目標達成をはじめとする観光政策は、スチュワードシップ、ツーリストシップの両輪で進めることが重要だと考えている。
「旅のカタチ」は常に変化 被災地域からの出展も
――最後に、TEJへの来場を検討している方々にメッセージをお願いします。
原会長 ライフスタイルの多様化、ウェルビーイングという考え方の浸透など、「旅のカタチ」は常に変化している。TEJから「進化する旅のカタチ」を表現し、新しい旅行を提案していきたい。一方で、旅は何といっても、楽しいことが基本だ。その楽しさや素晴らしさをTEJから発信していきたいと考えている。
最明理事長 TEJを訪れれば、旅行の最新トレンド、他の地域や他の企業の取り組みが分かる。そこに多くの気づきがある。また、自然災害を受けた地域からの出展もある。ブースを訪れて「今度行くよ」と声を掛けていただくだけでも応援になる。それぞれの企業・団体、地域において、TEJへの来場をぜひ推奨していただきたい。
蒲生理事長 TEJは、JNTOとしても、日本の魅力をしっかりと海外にPRし、日本の国民の皆さまに観光への関心を持っていただく重要な機会。観光産業の人材確保・育成の視点でも大切なイベントだ。2年ぶりの東京開催となるTEJに、多くの皆さまのご来場をお願いしたい。


記事提供:観光経済新聞
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