【現地取材】大台南会展中心(ICC Tainan)新幹線駅徒歩5分で繋ぐ、環境認証EEWHを取得する南台湾のグリーンイベント空間【台湾MICE回廊/4】

台湾の古都である台南において、新たなMICEの拠点として機能しているのが大台南会展中心(以下、ICC Tainan)です。2026年7月31日に現地で取材を行いました。本施設は、高速鉄道駅に隣接する優れた交通アクセスと、台湾最高レベルの環境性能、そして先進的なデジタル技術を融合した最新鋭のコンベンションセンターです。本記事では、現地での視察と運営担当者へのインタビューを交え、その魅力をレポートします。

ICC Tainanがある台南とは。台湾の歴史と文化を現代へつなぐ都市
台南の人口は約184万人、人口だけで見れば札幌市に近い規模を持つ台湾南部の都市です。
先住民族が暮らしてきた土地に、17世紀にはオランダ人が拠点を築き、その後は鄭氏政権、清朝の時代を通じて、19世紀後半まで台湾統治の中心となりました。日本統治時代には近代的な都市整備が進み、現在も安平古堡や赤崁楼、孔子廟、旧台南州庁などに各時代の痕跡が残されています。こうした歴史は史跡の中だけでなく、寺廟への信仰や祭礼、市場、路地、地域の食文化として、今も市民の暮らしに息づいています。

街のどこか懐かしい風景は映像作品にもたびたび登場し、台湾ドラマ『時をかける愛』では1998年の場面が台南各地で撮影されました。日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』(主演のひとりに清原果耶さん)や『ママ、ごはんまだ?』にも台南の風景が使われています。
一方、郊外の南部科学園区には半導体関連企業が集積し、台湾の先端産業を支えています。歴史的建築の再生や美術館の整備、台湾高速鉄道・台南駅に近接するICC Tainanの開業など、新しい文化・交流拠点も生まれました。台南は、過去を保存するだけの古都ではなく、歴史を暮らしや文化、産業へ受け継ぎながら変化を続ける都市です。
では、ICC Tainanを一緒に見ていきましょう

新幹線駅徒歩5分、国際空港から車で15分
ICC Tainanの開業は2022年4月21日、台湾高速鉄道(高鐵・新幹線)の台南駅から徒歩5分という抜群の立地を誇る最新鋭のコンベンションセンターです。総敷地面積は5.2ヘクタールに及び、最先端の半導体産業が集積するサイエンスパークやスマートグリーンエネルギーシティに隣接しています。

台湾高速鉄道の台南駅に近接しており、台湾全土の主要都市から非常にスムーズにアクセスできます。台南国際空港からも車で約15分という近さに位置しており、国内外からの参加者を円滑に受け入れられます。駅前には大型商業施設である三井アウトレットパーク台南があり、イベント前後のランチや休憩、時間調整に好適な周辺環境が整っています。
ほかにも台湾鉄道の沙崙(シャロン)駅も高速鉄道の駅に隣接しています。会場南側の駐車場ビルには、屋内駐車場(乗用車・バイク合わせて550台分)と屋外駐車場(バイク464台分)があります。電気自動車充電ステーションも設置されています。周辺には他にも多くの駐車場があります。


来場者を赤レンガの巨大なインスタレーションが迎える
建物のエントランスを彩るのは、台南の有名な孔子廟や古い街並みで古くから使われている「紅磚(赤レンガ)」を屋内に取り入れた大規模なデザインインスタレーションです。この伝統的な赤レンガと、最新のハニカムスチールトラス(鋼構造)の白い屋根を融合させた意匠は、コンベンション施設の屋内デザインとして台湾で初めての試みであり、歴史の深みを感じさせる象徴的な空間となっています。ロビーの天井高は14メートルです。



1階、660平方メートルの特別展示ホールに大手コンビニエンスストアの店舗が直接繋がっているのがユニークです。オープンな催事の際には扉を開放し、来場者が直接買い物を行える利便性を提供しています。イベント時にはこのセブンイレブンが大きな役割を果たします。
また、食事にこだわりたい主催者のために外部ケータリングを手配できます。現場に温かい状態で料理を運び、仕上げの調理をして温かいまま配膳するシステムがあり、本格的なランチやディナーも会場内で実施できます。

最大6000名を収容する1階無柱展示会場
メインとなる1階の展示エリアは、総面積10,692平方メートル(長さ132メートル×幅81メートル)を誇り、イベントの規模に応じて北側と南側のエリアに分割して利用できます。展示会場における特徴は、内部に柱が1本もない完全な無柱構造を実現している点です。可動式の間仕切りにより、西展区・東展区のふたつに分割できます。


天井の高さは最大24メートル、エントランス側のロビーエリアは13メートルとなっており、非常に広々とした快適空間を提供しています。この無柱設計により、大型の産業用機械や重量のある機材の搬入が容易となり、多様なレイアウトが可能です。標準ブースであれば最大600小間を設置でき、最大で5,000名から6,000名もの人々を一度に収容可能なキャパシティを持っています。
車両の出入り口が3つあり、大型トラックも直接乗り入れられます。



多様な規模に対応可能な会議室の構造、柔軟な拡張性
1階と3階には、多様な会議や商談に対応可能な全10室の多機能会議室が完備されています。各会議室の天井高は4.5メートルから7メートルに設計されており、ゆとりある空間となっています。
1階にはヌサンタリア、オレンジと名付けられた中小規模の会議スペース。床面積が約35平方メートルから52平方メートルで設計されています。可動式の仕切り壁を動かすことでスペースを自在に分割できるため、小規模なワークショップや個別の分科会、商談会などに合わせた柔軟なレイアウトの組み換えが可能です。

「エリア全体で空気のクリーンさや温度を個別制御できます。会議の合間には、前のロビースペースを受付やお茶を置くスペースとして活用できます。もてなしのアイデアを形にできるのがこの設計の強みです」とのこと。

3階には、天井高7メートルで最大1,000名を収容可能な独立設計の大ホール「大員」(1,080平方メートル)があります。他の会議スペースから物理的に独立しているため遮音性能が非常に高く、周囲の音や振動の影響を受けることなく、格式高いメインフォーラムや学術講演、基調講演に適しています。可動式の間仕切りにより4つに柔軟に分割できます。

「熱蘭遮」(ゼーランディア)は810平方メートル、天井高7メートル。シアター形式で最大750名まで対応。2分割可能です。
プロフェッショナル集団のGIS グループによる運営体制、サステナビリティの実践
本施設の管理運営を担うのは、台湾のコンベンション業界において豊富なノウハウとサプライヤーネットワークを持つGIS グループです。プロフェッショナルな運営チームが、主催者の要望に対してワンストップでサポートを提供しています。
運営体制の大きな柱となっているのが、台湾経済部国際貿易署(TITA)の強力な支援のもとで実践されている「サステナブル・マネジメント(持続可能な運営管理)」です。

ICC Tainanは、台湾最高峰のグリーンビルディング認証である「EEWH」を取得したサステナブルな建築構造となっています。環境に優しい建築資材の採用や、エネルギー効率を高める空調システムといったハード面の強みに加え、ソフト面でも主催者に対してペーパーレス化やゴミの削減を促すプログラムの共同設計など、包括的なバックアップを行っています。
優れたアクセス性能、国際基準のキャパシティ、そして環境配慮(ESG)に適合したサステナブルな運営体制を兼ね備えているからこそ、大台南会展中心は国内外の主催者から信頼される次世代の開催地として選ばれています。

見学を終え、館内カフェスペースにて、さらに詳しくお話をお聞きしました

サステナビリティへの配慮、デジタル化の取り組み
–台湾のMICE産業においてサステナビリティが重視されていると聞きますが、本施設では具体的にどのような取り組みを行っていますか。
「環境配慮は避けて通れないテーマです。本施設は計画段階から持続可能性を最優先に設計され、グリーンビルディング認証であるEEWH(台湾の亜熱帯気候に適した、生態・省エネ・健康の緑建築(グリーンビルディング)認証)を取得しています。環境に優しい資材の導入や、スマート空調システムはハードとしての私たちの特徴です。
これに加えて、台湾経済部国際貿易署(TITA)の支援のもと、施設におけるサステナビリティに関する運営管理を実践しています。主催者が企画を立てる段階からスタッフが並走し、デジタル登録によるペーパーレス化や、ゴミを減らすプログラムなど、ソフト面から環境負荷を減らす提案を行っています。ESGを重視するグローバル企業にとって、親和性の高い環境を整えています」

–これまでに開催されたイベントで、特に印象的だった先進事例を教えてください。
「2022年6月に開催された、2022 Taiwan Incentive Talk が大きな成功事例となりました。
日本と台湾から約100名の関係者が参加したイベントです。当時は(コロナ禍による)渡航制限などもあり、台湾国内のサプライヤーはここICC Tainanにリアルに集まり、海外のバイヤーとはバーチャルプラットフォームを通じてオンラインで繋ぐハイブリッド形式で行われました。最新のデジタルインフラを活用して、オンラインとリアルが融合した1対1の商談セッションを見事に成功させたのです。この実績によって、当施設が最新のハイブリッドイベントを完全にサポートできることが実証されました」

–技術開発や今後のデジタル化の方向性についてお話いただけますか。
「私たちは大学やテクノロジー企業と提携し、次世代のMICE人材の育成にも取り組んでいます。施設内では、AIを用いたスマートカスタマーサービスや多言語翻訳、スマート受付システム、ビジネスマッチングシステムを導入しています。これらを実際に活用する場として、自社主催のSouth East Asia Talent Show & AI Transformation Expoを定期的に開催し、技術的な挑戦と人材育成の成果を形にしています」

今後の日本との交流について
–今後の日本との交流について、お聞かせください。台南という場所でMICEを行うことについての魅力、価値も合わせて教えていただけますか。
「台湾と日本は、経済や文化の面で長年にわたり素晴らしい信頼関係を築いてきました。私たちGIS Groupは、2025年の大阪・関西万博への参加や、パシフィコ横浜の視察などを通じて、施設運営や国際協力についての交流を重ねてきました。
台南は400年以上の歴史文化を持つ古都でありながら、世界最先端の半導体製造やグリーンエネルギー産業が集積しているという、非常にユニークな地域性を持っています。
私たちがアピールしたいのは、こうした文化、テクノロジー、そしてビジネスを高い次元で結びつけた、オリジナリティあふれるイベントを求める国内外のMICE主催者の皆様です。たとえば、最先端のデジタルインフラを活用したハイブリッドイベントや、社会的責任、環境配慮を重視する企業や国際機関の会議での利用を想定しています。ハードとしての魅力だけでなく、台南という街のストーリーをイベントの価値に繋げたいと願う主催者にとって、ここは最良の選択肢になります。
日本の主催者の皆様がここ台南でイベントを検討される際には、会場選定から地元パートナーとのビジネスマッチング、プロモーション、当日の運営に至るまで、すべてをワンストップでサポートする体制を整えています。日本の皆様がICC Tainanを舞台に、新しい協働ビジネスを展開されることを心から歓迎いたします」

取材にご協力をいただき、ありがとうございました
GIS グループ CMO Nick Lee(李克中)さん(左)
大台南会展中心(ICC Tainan)総経理室マネージャー Liang Chen(陳亮勳)さん(その右)
大台南会展中心(ICC Tainan)事業開発担当アソシエイトマネージャー Gianna Hsu(許郁屏)さん(一番右)
解説:GISグループについて
GIS Groupは、台湾を代表する総合MICE企業です。国際会議や展示会の企画・運営、会場運営、デスティネーションマーケティング、AIを活用したイベントソリューションなどを提供しています。また、ICC Tainanを含む台湾全土8か所の会議・展示施設を運営しています。IAPCOやICCAなどの国際組織における活動を通じて、台湾のMICE産業と世界を結ぶ重要な役割も担っています。
GIS Groupは、大学やMICEテクノロジー企業と連携し、次世代のMICE人材を育成しています。テクノロジーの活用にも取り組んでおり、AIカスタマーサービス、多言語翻訳、スマート受付、ビジネスマッチング、ハイブリッドイベント、スマート会場管理などを導入しています。
ICC Tainanでは、GIS Groupが「South East Asia Talent Show & AI Transformation Expo」を主催し、AI活用と人材育成に関する最新の成果を発信しています。
South East Asia Talent Show & AI Transformation Expo 2026 https://seats.tw/

ICC Tainan視察を終えて…
「これからの台南」に先行して生まれた、台湾南部の交流拠点
ICC Tainanを現地で歩いて感じたのは、既存の観光都市に大型会場を付け加えた施設ではない、ということです。高速鉄道駅からは近い一方、会場周辺には飲食店や宿泊施設がまだ十分に集積しているとはいえません。施設が、将来の需要を見越して先に置かれたことが伝わってきます。
巨大な無柱展示場や独立性の高い大ホールは、その受け皿です。しかし、ICC Tainanの本質は建物の大きさではありません。赤レンガによって古都の記憶を館内へ持ち込みながら、スマート受付、多言語翻訳、ビジネスマッチング、ハイブリッド開催を実装する。その姿は、歴史都市と先端産業都市という台南の二面性を、そのまま施設に置き換えたように見えました。
注目したいのは、GIS Groupが会場を貸して待つだけではない点です。渡航制限下の2022 Taiwan Incentive Talkでは、台南に集まった台湾側事業者と海外バイヤーをオンラインで結びました。さらに大学や企業と連携し、自らAI関連展示会を開催して、技術の実証とMICE人材の育成を重ねています。ICC Tainanは、まだ存在しない需要や交流を自らつくろうとしています。

台湾MICE回廊の中で台南が担う役割
台湾MICE回廊における台南の役割も、ここにあるのではないでしょうか。
台湾高速鉄道が主要都市を結ぶMICE回廊において、台南は台北や高雄の中間地点ではありません。
南部科学園区や大学に集積する技術・研究成果を、国際会議や展示会、商談会を通じて国内外へ発信し、台南の歴史文化を参加者の開催地体験に結びつける役割が期待されます。人気の観光地・台南を、産業交流の目的地へ変えられるか。ICC Tainanは完成された答えではなく、台湾南部の成長を先取りした試みとして注目したいです。
ICC Tainan Webサイト https://icctainan.com/
「台湾MICE回廊をゆく」は全7本の大型企画です
今後、台北、台南、高雄での取材記事を9月にかけて、合計7本公開予定です。台湾MICEの「いま」を知っていただける大型連載企画です。
※本記事の写真は特に記載がない限り、MICE TIMES ONLINE編集部の撮影によるものです。

