【現地取材】台南で感じたMICEディスティネーションのひとつの姿。奇美博物館、台南市美術館1館・台南国家美術館(旧2館)を訪ねて。歴史の息づかいを感じる台南は街そのものがミュージアム【台湾MICE回廊/5】
台湾MICE回廊を構成する主要なMICE施設以外にも、台湾は魅力的なユニークベニューが数多くあります。今回は、台南を代表するユニークベニューを訪ねました。本記事では、多くの観光客や旅人を魅了する古都・台南についてもご紹介します。
記事の終わりでは、京都出身の筆者が台南で得た新鮮な体験と、MICEディスティネーションについての考察をまとめています。
※2026年8月1日に取材しました
台南の概要と歴史:人口184万人、いくつもの時代を重ねた街並み

台湾は東アジアの海上交通の要衝に位置する、人口約2,327万人の島です。九州よりやや小さい面積に、台北、新北、桃園、台中、台南、高雄の6直轄市があり、都市ごとに異なる歴史や産業、文化を育んできました。
その南西部に位置する台南市は、人口約184万人を擁する台湾有数の都市です。先住民族が暮らしてきた土地に、17世紀にはオランダ東インド会社が進出し、現在の安平周辺にゼーランディア城を築きました。その後は鄭成功がオランダ勢力を退けて鄭氏政権の拠点とし、清朝統治下でも長く台湾の政治・経済・文化の中心を担いました。日本統治時代には道路や鉄道、官公庁などの都市基盤が整えられています。安平古堡、赤崁楼、孔子廟、旧台南州庁、旧台南合同庁舎などをたどれば、台湾が歩んだ複数の時代を一つの街で見ることができます。

しかし、台南の歴史は史跡や展示ケースの中だけに残されているのではありません。
寺廟では今も人々が祈り、祭礼が街を進み、市場や路地では地域の食文化が日常として受け継がれています。かつての官庁や警察署も、文学館や美術館として新たな役割を与えられました。台南市美術館1館は日本統治時代の旧台南警察署を活用し、向かいに立つ2館は現代建築によって新たな景観をつくっています。郊外では、奇美博物館が西洋美術、楽器、兵器、自然史などの幅広いコレクションを公開しています。歴史的建築、美術、信仰、食、現在の暮らしが切り離されず、街を歩くこと自体が台湾の歴史を読み解く体験になります。台南が「街そのものがミュージアム」と感じられるのは、過去を保存しているだけでなく、それを今も使い続け、現代の文化へと更新しているからです。


どの街でもニャンコとワンコは可愛く、味わい深いものですね
約100年前のアールデコ「1館」と現代的建築の「旧2館」(台南国家美術館)
台湾の文化的な首都として知られる台南に、地域の美術振興と国際交流を支える新たなシンボルとして親しまれているのが台南市美術館です。近隣の古い街並みに調和する現代的な建築である「台南国家美術館(旧2館)」と、1931年竣工の昭和初期アール・デコ調建築を再生した「1館」で構成されています。1館と旧2館は徒歩で約10分ほど移動した場所に位置します。
2025年3月25日に、国家レベルの美術研究を推進する「台南国家美術館準備室」が発足したことで、学術的および文化的な価値が大きく向上しました。
台南市美術館 Webサイト https://www.tnam.museum/
台南国家美術館準備室 Webサイト https://www.momatainan.gov.tw/jp/
台南市美術館1館:旧台南警察署の風格を現代に保存、梅澤捨次郎が描いたアール・デコ調歴史空間


重厚な歴史の風格を感じさせる歴史的古蹟を再生した建物です。1931年(昭和6年)に日本の建築家である梅澤捨次郎氏の設計によって竣工した、旧台南警察署の庁舎を保存・修復したものです。梅澤氏は、台湾において主要な政府庁舎や商業建築を多く手がけた高名な建築家として知られます。2019年に「台南市美術館1館」として開業しました。


ファサードは竣工当時を復元した特徴的な黄色調の赤レンガで覆われています。窓の配置や、エントランス上部に見られるクラシカルなアーチ型装飾など、昭和初期のモダニズム建築やアール・デコの美学が良好な状態で維持されています。


建物の内部へ進むと、中庭には大きなガジュマルの木がそびえ立っており、レンガ壁に優しい影を落としています。
1936年に建てられた「武徳殿(道場)」などの遺産も隣接しており、エリア全体が古都台南の豊かな歩みを伝える歴史ストーリーの媒体となっています。
公式サイトでは、演出、芸術公演、ファッションショー、記者会見、商品発表会、表彰式、映画上映、結婚式・宴会などの会場利用を案内しています。このように歴史的価値の高い保存空間は、エクスカーションや、プライベートなVIP向けのレセプションといったユニークベニューとしても活用可能ではないでしょうか。
公式サイトの利用案内はこちら


リン・チーリンさんとAKIRAさんが結婚披露宴でこの1館を利用されたことでも有名です。
林志玲婚禮 確定17日在台南市美術館1館舉辦

台南国家美術館(臺南國家美術館籌備處 旧・台南市美術館2館):ホウオウボクを模した五角形の現代建築、自然光がやさしく降り注ぐ2館の環境調和型設計

台南国家美術館は、現代の市環境に呼応する最先端の美学を追求した建物です。日本の著名な建築家であり、2014年にプリツカー賞を受賞した坂茂氏らの共同設計によるものです。



坂氏らが手がけたデザインは、台南の市の木「ホウオウボク」の花をモチーフにしたユニークな五角形の外観。天井部には、強い直射日光を遮りつつ、森の木漏れ日のような自然光を屋内に取り入れる大型フラクタル構造の屋根が架けられています。建物内の温度上昇を防いで空調負荷を軽減し、環境負荷を抑える環境調和型の思想(ESG)を表現しています。


館内には、約2,700平方メートル、16室の展示室が設けられています。展示室は建物の各階に分散し、中央の吹き抜けや階段、回廊を巡りながら鑑賞する構成です。大小の展示室を組み合わせることで、絵画や彫刻だけでなく、映像、インスタレーション、建築展など幅広い企画に対応します。
展示室を出るたびに、坂茂が設計した五角形の建物や、フラクタル構造の大屋根、そこから差し込む光、台南の街並みが視界に入り、作品鑑賞と建築体験が交互に現れるのが印象的です。館内には収蔵施設や劇場、子ども向けの芸術空間なども併設され、美術作品を静かに見るだけでなく、舞台芸術や教育活動を含む複合的な文化拠点として設計されています
実際に館内を歩くと、いくつもの小さな美術館を巡っているような体験でした。



最上階(5階)にある「The Pool(南美春室)」は、天窓から自然光が降り注ぐ明るいカフェスペース。周囲に広がる台南のレトロな建築を一望できるロケーションです。

「跨域展演廳」(多目的ホール)を使ったイベント開催
館内の「跨域展演廳」(Interdisciplinary Performance Hall)では、国際シンポジウムや講演会、展覧会の開幕式、文化施設や寺廟が参加するプロジェクトの発足式などが開かれています。
多目的ホールとして空調、照明、音響設備、楽屋を備え、最大230名を収容できます。セミナーや記者会見、商品発表会などに利用できる一方、宗教・政治活動は禁止され、催事内容は美術館の運営方針や芸術文化との整合性が求められます。坂茂氏らが設計した現代的な建築とアートに囲まれた環境で、一般的な会議施設とは異なるイベントを開催できることが、この会場の特徴です。

蔡草如氏の伝統彩絵から最先端の科学修復まで、台南の風土が育んだアートと専門技術の融合
台南市美術館の大きな強みは、地域の伝統に根ざした高水準のアート展示と、それを科学的に支える高度な専門技術の存在といえます。
館内では、台南の伝統的な廟宇(お寺)の門扉などに描される宗教画「伝統彩絵」の巨匠である蔡草如や、「台湾工芸の父」と称される顔水龍など、地元の風土と緊密に結びついた芸術家の作品を紹介しています。門神の生き生きとした表情や1961年の干支にちなむ美しい版画など、民俗信仰と近代絵画を融合させた蔡氏の作品からは、台南の精神世界を深く学ぶことができます。
高い専門性を証明するのが、台湾の美術館として初めて設立された「美術科学研究センター」です。最新の科学的検出器具や高度な修復技術が導入されており、年間で最大180件もの重要な文化財の修復および保存処理を行うことができます。このような専門的で持続的な研究成果が、体験型のワークショップや特別セミナーを強力に支援しており、ただ鑑賞するだけでなく知的な探求心を満たすコンベンションの目的地としての地位を確立しています。

台南国家美術館準備室(臺南國家美術館籌備處)とは
台湾文化部が2025年3月に設置した、台南国家美術館の設立準備を担う政府機関です。台中の国立台湾美術館に続く台湾2館目の国家級美術館で、台湾初の近現代美術に特化した国立美術館を目指すものです。台南市美術館2館の建物を活用し、1895~1960年を中心とする台湾美術の収集、研究、保存、修復、展示を担い、「台湾美術史の再構築」を進める重要拠点と位置づけられています。文化部の公式発表でも「台湾第2の国家級美術館」「台湾初の近現代美術専門」と明記されています。
奇美美術館:欧州風宮殿の圧倒的建築。世界最高峰やアジア最大級のコレクションの数々

奇美美術館 Webサイト https://www.chimeimuseum.org/ja
海外のVIPやビジネスエリートを招いたプレミアムなインセンティブ旅行、あるいは高水準の学術交流を企画する際、ユニークベニューとして選ばれているのが奇美博物館(Chimei Museum)です。約9.5ヘクタールの広大な敷地にそびえ立つ美しい白亜の西洋宮殿は、来場者を非日常の世界へと引き込みます。創立者である許文龍氏の温かいもてなしの精神、世界に誇る常設展示のスペック、およびプレミアムな懇親会に最適である各種カフェスペースの利便性に焦点を当て、その実用的な価値を紹介します。

大衆のために開かれた美の殿堂、創立者が抱いた八十年の夢
奇美博物館は、奇美グループの創立者である許文龍氏が、幼少期から抱き続けた夢を具現化した文化施設です。幼い頃に地元の教育博物館で深い感銘を受けた許氏は、いつでも気軽に一流の芸術に触れられる場所を作りたいと願い、個人的な美術品の蒐集を開始しました。1992年に創設されて以来、現在の壮麗な白亜の洋風建築へと移設された後も、その温かいホスピタリティ精神が受け継かれています。

「3歳の子どもから90代のお年寄りまで、誰もが観て、聴いて、美を理解できること」を基本理念とする本館は、どれほど貴重な国宝級の収蔵品であっても敷居の高さを感じさせない心地よいもてなしの空気に満ちており、国内外の参加者を出迎えます。
筆者は暑い8月に訪ねましたが、館内は快適で過ごしやすく、椅子やベンチも多く設置されており、誰にとっても過ごしやすい空間でした。オリジナルグッズショップもあり、お土産の手配も容易です。
世界最高峰のバイオリンコレクションなど4つのテーマ展示が織りなす知的探求
本館は、西洋芸術、楽器、兵器、動物標本などの広範な所蔵品を有しており、全収蔵品の約3分の1にあたる4,000点以上を常設展示しています。

特にストラディヴァリウスをはじめとする1,300台以上のバイオリンコレクションは世界屈指です。過去には日本から30名の専門技術者を招き、一般立ち入りが厳しく制限されている「コレクション庫」でアントニオ・ストラディヴァリの名器『Viotti』(1709)や『Joachim-Elman』(1722)を直接手に取って試奏・研究する究極のテクニカルツアーが実施されました。VR体験ホールで演奏を体験することもできます。

地球上の生命の歴史を体感する動物ホールは、世界から集められた多様な動物標本や貴重な化石が展示されています。剥製が並ぶ巨大な空間は臨場感に満ちており、地球の生命の変遷過程や生態系を立体的に学べます。

西洋美術の発展の歩みを時代順にたどる芸術ホールには、13世紀から20世紀の絵画、彫刻家ロダンの傑作を集めたロダンホール、古代ローマから20世紀の彫刻が並ぶ彫刻アベニューなど、時代順に西洋美術史を体感できる規模を誇ります。


高度な工芸技術と科学の歩みを伝える兵器ホールは、ファンタジーや軍記物が好きな私には個人的にもっとも楽しめたエリアです。世界各地の古代の鎧、甲冑、弓矢などが壮観に並びます。防御と攻撃の歴史を通じて、当時の非常に高い鍛造金属技術や科学の進化を肌で感じられます。これだけの密度で同種の展示が見られる場所は、非常に希少です。
入場ゲート外に揃うレストランやカフェスペース、コンビニ

イベント主催者にとって、エクスカーションの質を高めるための食事の選択肢は極めて重要です。奇美博物館は、入場チケットを購入しなくても利用できる入場ゲートの外のエリアに、極めて上質な飲食施設を多数完備しています。

パノラマビューを望む2階の「Deep Blue Café」では、プレミアムなレセプションに最適です。40層以上重ねられた極上のミルクレープを楽しむことができ、贅沢なアフタヌーンティーやVIPの休憩ラウンジとして活用できます。美術庭園を一望する「スターバックス」も併設されており、参加者のためのリフレッシュスペースが整っています。コンビニ、ミュージアムショップといった施設も、もちろん充実しています。

空港から5分、中心部からのアクセスも良好
奇美博物館は、台南中心部から少し離れた郊外に位置しながらも、非常に優れたマルチアクセスを誇っています。台南国際空港からタクシーでわずか5分、台鉄の保安駅から徒歩15分、新幹線(高速鉄道)の台南駅からは1時間に2から4本運行されている無料シャトルバスで直接アクセスできるため、移動のストレスがありません。
台南探訪記:知的好奇心を刺激する、台南のたたずまい

歴史が層をなす街並み、そこに今も人々の営みが息づく
台南では、歴史が過去の景色として隔離されていません。古い建築の隣を多くのバイクが走り、寺廟から人々の祈りが街へあふれ、市場では今日の食卓を支える商いが続いています。時代の異なるものが整理されず、同じ視界に収まる。ミックスされた一言で言い表せないことを感じるのが、台南を歩く面白さです。
百貨店と市場に残る、台南の商業史


中心市街地では、林百貨、西市場、永楽市場が、それぞれ異なる商いの時間を伝えています。当時の繁華街・末廣町二丁目に1932年開業した林百貨は、台南で初めてエレベーターを備え、人々から「五棧樓仔」(5階建の意。当時はまだ高層建築が珍しかったのです)と呼ばれた近代消費文化の象徴です。林百貨の名称は、創業者である山口出身の日本人実業家・林方一(はやし・ほういち)の姓に由来します。建物には当時の意匠が残る一方、現在は台湾の工芸品やデザイン商品を扱い、再び人を集めています。多くの日本人旅行者にも大変人気があります。


1905年に設けられた西市場も、保存されただけの歴史的建築ではありません。修復後の建物には新しい店舗が入り、百年以上前の市場が現代の商業空間として使われています。その周辺から永楽市場にかけては、食材や料理を求める人々が行き交い、観光地になる以前から続く台南の日常が見えます。林百貨が都市生活への憧れを示す場所なら、市場は市民の暮らしを支えてきた場所です。
神農街・消えた水路から港町の姿を想像する

神農街は清代、とくに18世紀後半に五條港が発達した時期に栄えた商業街です。港から入った商品を扱う商人や荷役労働者が集まりました。神農街の細い道と奥行きのある町家は、かつてこの一帯が五條港と呼ばれる港湾商業地域だったことと結びついています。現在は建物の中に工房や店舗が入り、若い世代の表現の場となっていますが、街路の幅や寺廟との距離には、水路を通じて物資と人が集まった時代の都市構造が残ります。目の前に海がなくても、街の形から港を想像できます。




港町としての台南を、より大きな世界史へつなぐのが安平(アンピン)地区です。オランダ東インド会社は1624年に進出し、ゼーランディア城を築きました。現存するオランダ時代の遺構は城壁の一部に限られますが、その背後には台湾、日本、中国大陸、東南アジア、ヨーロッパを結んだ海上交易があります。安平の歴史は、台南を台湾内部の古都としてではなく、早くから世界経済に組み込まれていた港湾都市であることを示しています。
統治と教育、近代化が刻んだ都市の表情

赤崁楼(せきかんろう)は、オランダ人が築いたプロヴィンティア城を基層に、中国式の楼閣や祠廟が重なった建築です。台南孔子廟は1665年に創建され、儒学教育を通じて人材を育てる役割を担いました。軍事、行政、教育という都市を支える機能が、それぞれ異なる建築として残っています。


台鉄台南駅の駅舎は1936年完成。かつて2階に鉄道ホテルとレストランを備えた駅は、日本統治時代に進められた都市の近代化を象徴します。安平の城壁、孔子廟、近代駅舎、市場、寺廟が一つの都市に共存する台南では、単独の名所を見るだけでは街の全体像をつかめません。統治、交易、教育、信仰、商業という視点を重ねたとき、街全体が台湾の歴史を読み解く巨大なミュージアムとして立ち現れます。

まとめにかえて:京都生まれが台南で考えたMICEディスティネーションのこと

私は京都の生まれです。人生のうち40年以上を京都で過ごしてきました。
生まれ育った伏見では、安土桃山時代から幕末にかけての歴史を、ランチをしたり、コンビニに買い物に行くだけで感じることができます。高校は日本最大の禅寺・妙心寺の系列であり、すぐ隣の敷地。今もドラマや映画の撮影によく使われています。大学は出町柳のデルタから賀茂川を自転車で毎日駆けて通い、授業の合間には京都中の社寺や文化財を巡りました。日常で、古都の歴史を浴びていました。おいしいパン屋さんや洋食屋、ラーメン屋にも足繁く通いました。当時はまだまだ観光客も少なくて、どこに行っても、のんびりと過ごすことができたものです。
私が「京都出身です」と伝えると、「いいところですね」「好きな町です」と言っていただけます。当たり前のように歴史や文化を感じられるのが、京都です。観光客の多い人気スポットは、今でも京都のほんの一面でしかありません。

MICEによる訪問は必ずしも本人の意思ではない
今回の取材では台南に3日間滞在しました。
私は、多くの方が京都に感じているのでないかという感覚を、台南で感じることができました。気になった路地に踏み入ったり、交差点で立ち止まって見渡したり、壁や看板、店頭の装いのひとつひとつが、にわかの作り物ではない、「連なってきたもの」の気配を持っていたのです。
中国や韓国、タイといったアジアの長い歴史を持つ街でも、感じたことのないことで、とても新鮮な体験でした。
その背景にあるのは、様々な時代を重ねていることにあるのではないかと考えます。京都は平安時代に終わった都市ではなく、その後の各時代が層のように重なっています。台南にも時代の層を感じました。古い時代だけではなく、「今」の時代も重なっていることで、台南を他にはない存在にしている理由がありそうです。
来場者や参加者がMICEに参加するため、各地域や都市を訪れるのは、本人の意思ではないことも多いでしょう。開催されるから足を運ぶのであって、もとから行きたいと考えていたわけではないということです。
訪れた先でその地域や都市をどのように捉えるか、印象的な滞在になるのかは、MICEでの体験において重要な意味を持ちます。それは華やかな観光スポットの数で決まるのではなく、地域や都市が持つ本質的な歴史や文化、産業などがもたらすものです。地域の人々とのふれあいも、とても大切です。

MICEはたくさんお金を落とす…それだけではなく開催地に生み出すものがある
私にとっては台南はとても深い記憶につながる訪問になりました。そして、台南の一ファンになりました。
今回のような長期の取材ツアーも、広くMICEに含まれるビジネストラベルです。仕事で各地に赴くと、MICEディスティネーションに必要なことは何か、いつも考えます。当然、決まった答えはなく、人によって、まったく異なってくるでしょう。
MICEは旅行者が落とすひとりあたりのお金が多い、とメリットが説かれることがあります。そのことは否定しません。大事です。
しかし、MICEは訪問者も何かを生み出し、知見を持ち帰り、次の企画やアイデアを考える機会になります。サービスを受け取るだけの客ではなく、開催地に新しい情報や関係を持ち込む存在です。MICEディスティネーションに求められるのは、観光客を受け入れる力に加えて、人、情報、技術、資金が行き交い、次の活動を生み出せる構造なのではないでしょうか。
そんなことを考えた、台南での滞在でした。
こんなことを考えたくもなる、それもまた台南のなせる業でしょうか。(MICE TIMES ONLINE 井上)

「台湾MICE回廊をゆく」は全7本の大型企画です
今後、台北、台南、高雄での取材記事を9月にかけて、合計7本公開予定です。台湾MICEの「いま」を知っていただける大型連載企画です。
※本記事の写真は特に記載がない限り、MICE TIMES ONLINE編集部の撮影によるものです。

