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【現地取材】台湾・高雄展覧館が進める「前展後場」MICEを開催して終わりではなく、地域に何を生み出すか【台湾MICE回廊/6】

展示会場は展示会を行うだけの場所?

台湾を代表する港湾エリアに位置する「高雄展覧館」を訪ねると、あなたも展示会場に対してのイメージが変わるかもしれません。
展示会場は、展示会を開催するための「箱」なのか。それとも、展示会をきっかけに商談を生み、地域企業と来場者をつなぎ、さらには新しい産業を育てる「場」なのか。

高雄展覧館では、展示ホールでの商談を地域の工場視察につなげる「前展後場」という考え方や、高雄の産業構造を生かした展示会の企画、未来産業を呼び込む取り組みが進められていました。

取材を進めて見えてきたのは、展示会そのものの成功だけではなく「その後、地域に何を残すのか」までをMICE施設の役割として捉える姿です。日本の展示会場はどうでしょう。その役割を、高雄の取材を通して考えていきましょう。

※2026年8月3日に取材

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高雄は台湾南部の「港」と「産業」の拠点

台湾南部に位置する「高雄(たかお)」は、人口約270万人を擁する台湾第2の都市です。台北市の人口約243万人を上回る、約270万人が暮らしています。旧高雄県と高雄市の合併により、台湾の直轄市の中で最も広い面積をもつ都市です(2026年時点)。

古くから港湾都市として発展し、重工業や製造業が集積。石油やアルミニウム、セメント、金属、機械、船舶など、台湾の産業を支えるさまざまな製品が行き交う一大物流拠点でもあります。

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君はくまモン?いいえ、公認の兄弟キャラクター「高雄熊(ガオションション)」、高雄市の公式PRキャラクターです

そんな産業都市・高雄の街を歩いていると気になるキャラクターに出会います。 それが高雄の公式マスコット「高雄熊(ガオションション)」。 あれ、くまモンでしょうか? 2017年に熊本県と高雄市が友好交流協定を結んだ際に生まれた、高雄市の公認のキャラクターです。

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(動画・音声が流れます)

台湾最大規模のウォーターフロント都市開発計画「アジア新湾区」

2014年4月に開業した「高雄展覧館」は、屋内外合わせて25,000㎡を超えるイベントスペースを備えた、台湾初のウォーターフロント型多目的コンベンション施設です。台湾が進める「MICE産業の二大拠点」政策の一環として、高雄を南部地域のMICEセンターへと発展させることを目的に整備されました。

高雄展覧館 Webサイト https://www.kecc.com.tw/

305 バンケットルーム
305 バンケットルーム

館内は大きく、展示場エリア、会議センター、主催者や参加者をサポートする専用スペースの3つで構成されています。

全体のフロアプラン。Nが北館、Sが南館。Wがウォーターフロントプラザ
全体のフロアプラン。Nが北館、Sが南館。Wがウォーターフロントプラザ
3階のフロアマップ

高雄国際空港やMRT(地下鉄)、高雄環状ライトレール(LRT)からアクセスでき、大型クルーズ船が寄港するクルーズターミナルにも隣接しています。

高雄環状ライトレール(LRT)
高雄環状ライトレール(LRT)

この一帯で進められているのが、台湾最大規模のウォーターフロント都市開発計画「アジア新湾区」です。総面積600ヘクタール以上、総投資額約1,300億台湾ドルにのぼる国家級プロジェクトで、かつての工業・港湾エリアを、デジタル技術、観光、国際ビジネスが集まる新たな都市拠点への転換を目指しています。高雄展覧館は、大規模な都市開発の中核施設の一つとして位置づけられています。

周辺には「ホテルオークラ高雄」「インターコンチネンタル高雄」「マリオット・ラグジュアリーコレクション」「承億ホテル」などのホテルも集まり、海外からのビジネスパーソンやVIPを迎える滞在環境も整っています。

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高雄展覧館を運営する「安益グループ」

「安益グループ(Interplan Group)」に目を向けてみましょう。展示会やイベント、国際会議の企画・運営・施工から、「高雄展覧館」「メッセ桃園」コンベンション施設の運営まで、MICEに関わる幅広い事業を手がけています。MICE TIMES ONLINE編集部は過去に「メッセ桃園」を取材しています。

日本とのつながりも深く、博報堂グループと資本・業務提携を締結。博報堂のグローバルネットワークも活用しながら、国際的なビジネスを展開しています。


地域に必要な展示会を企画し、育てる 

展示会の先に何を生み出すのか。ここに高雄展覧館ならではの役割があります。具体例を紹介します。

高雄展覧館 提供:全景
高雄展覧館 提供:全景

1.今の強みを活かす

高雄展覧館は台湾南部が強みとする産業や地域に必要とされる分野から、展示会を企画し、育てています。

商談から工場視察へつなぐ「前展後場」

「前展後場(フロントショップ・バックファクトリー)」という独自のビジネスモデルを形成します。高雄周辺にはネジ、鉄鋼、金属、化学など40年以上にわたって形成されてきた製造業のサプライチェーンがあります。展示会場をショールーム(前展)とし、生産拠点や工場(後場)をつなげます。

「海外からのバイヤーを迎えた際、午前中に展示ホールのブースで製品の商談を行い、午後には車で30分ほどの距離にある実際の製造工場へバイヤーを案内することができます」と説明いただきました。

展示会場で製品を見るだけでなく、その日のうちに実際の製造現場や品質管理体制まで確認できる。バイヤーにとっては、製品への理解を深め、企業への信頼を高める機会になります。商談後には、地元工場で夕食会を開くこともあるといいます。展示会を「商談の場」で終わらせず、地域産業へとつなぐ入口にする。これが「前展後場」の考え方です。

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高雄展覧館 提供:Annual-Global-Health-Conferene

港湾都市だからこその「産業×MICE」

石油化学、防衛、造船、農林水産など、南台湾の主要産業をテーマにした国際見本市やイベントが開催されています。

「台湾国際ファスニング見本市(Taiwan International Fastener Show)」「台湾国際ヨットショー(Taiwan International Boat Show)」「高雄国際石油化学フォーラム・製品展(Kaohsiung International Instruments & Chemtech Expo)」など。
高雄展覧館 提供:TASTI Exhibition
高雄展覧館 提供:TASTI Exhibition

港湾都市・高雄ならでは。大型展示を受け入れる「27mの無柱空間」

港湾都市の立地を活かして、施設にも工夫が施されていました。北館(8,800㎡)・南館(9,100㎡)の展示ホールは、高さ27mの無柱空間。大きなガラス窓から自然光が入る開放的な空間です。12×12mの大型ガラス扉をレールに沿って開けると、展示ホールと屋外を直接つなぐことができます。

South Hall
South Hall

2014年から隔年で開催された「台湾国際ボートショー(Taiwan International Boat Show)」では、実物の大型ヨットを館内に搬入・展示。100台規模の高級車が集まる「フェラーリ・ラリー(Ferrari Rally)」や、2024年の「台湾太空国際年会(TASTI2024)」では、ロケット推進器や人工衛星といった大型・高層の展示物も館内に持ち込まれました。

高雄展覧館 提供:2016 Taiwan Int’l Boat Show by Amedee


ウォーターフロントを舞台に、展示会の楽しみ方を広げる

屋外のウォーターフロントプラザも活用できます。秋田の「竿燈まつり」を屋外で披露した実績があるほか、近年広がっているペット用品の展示会では、芝生エリアをペットのプレイスペースやオーナー同士の交流の場として開放。楽しみ方が広がります。

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高雄展覧館 提供:ウォーターフロントプラザ
高雄展覧館 提供:ウォーターフロントプラザ
高雄展覧館 提供:ウォーターフロントプラザ
高雄展覧館 提供:ウォーターフロントプラザ
高雄展覧館 提供:ウォーターフロントプラザ

2.未来の産業を呼び込む

少子高齢化が進む台湾で3万人が集まる「Ageless Expo」

高齢化に対しても積極的なアプローチを行っています。
台湾では日本と同様に少子高齢化が進み、出生率の低下(2026年時点で0.89)が社会課題になっています。そこで「展示会」という産業形成の場に変えようとしています。

スポーツ、健康、医療・介護、スマート福祉用具、シルバーライフサービスなどを組み合わせ、産業イノベーションと市民参加を両立させる展示会ブランドを育てていく考えです。そのひとつが「楽・無齢博覧会暨智慧健康産業展(Ageless Expo)」です。2025年には3日間で約300小間が出展し、約3万人が来場しました。

※楽・無齢博覧会暨智慧健康産業展(Ageless Expo)Webサイト
https://www.eldercareasia.com/en/index.html
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高雄展覧館 提供:medical conference and exhibition

「台北に比べて生活費が安く、温暖でゆったりとした気候の高雄は、リタイア後の移住先として非常に適しています。このシルバー産業を高雄独自の都市ブランドとして定着させ、社会的な課題解決に貢献したい」といった展望を聞きました。


台湾唯一の5G専用ネットワーク。重工業から未来産業の街へ

都市の産業展開にともない、半導体、AI、スマート製造、次世代通信、人工衛星、スマートシティ、AIロボット、海洋技術、ネットゼロなど、未来の最先端分野の展示会やフォーラムの拡大にも注力しています。「高雄スマートシティ展」やスタートアップ関連の展示会、持続可能性・循環経済をテーマにしたイベントなど、新たなテーマを国際的なビジネス機会へとつなげます。

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高雄展覧館 提供:South Hall_Smart City Summit 2026

「会場こそがプラットフォーム、テクノロジーこそがサービス(場館即平台、科技即服務)」

施設そのものにも新しい技術を取り入れています。
2021年、世界中で5G通信のテストが行われていた時期に、政府の政策と連携して専用の通信設備を整備。2023年には、台湾のコンベンション施設として初めて「行動ブロードバンド専用電気通信ネットワーク運営ライセンス」を取得しました。館内全てに高速かつ低遅延の5G専用ネットワークが完備されています。

AWS Day Tech Forum and Exhibition
高雄展覧館 提供:AWS Day Tech Forum and Exhibition

この環境は、展示会での体験にも活用されています。例えば3D・4K映像を使った多言語のリアルタイム翻訳、360度映像による没入型のバーチャル観光展示、ロボットとドローンを組み合わせたスマート倉庫管理など。VR体験でよくある「体験している人にしか状況が分からない」問題も、5G専用ネットワークによる低遅延通信を使えば、映像や情報をリアルタイムに同時出力。現場の解説員が体験内容を説明しやすくなるため、展示会での体験効率が向上したといいます。

North Hall_International Congress and Exhibition
高雄展覧館 提供:North Hall_International Congress and Exhibition

Editor’s note「展示場を埋める」から「国と地域に何を生み出すか」 

日本でも、地域産業に合わせた展示会は開催されています。では展示会の「後」は、どこまで設計できているでしょうか。

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展示会場の利用率、来場者数、出展小間数、売上…展示会を評価するうえで欠かせない数字です。一方で取材して感じたのは「展示場をどう埋めるか」だけではなく「展示会を通じて地域に何を生み出すか」。その先にある商談、地元企業への送客、産業振興、新しい産業の創出、国際的なネットワーク形成までを展示会の成果として捉えていました。

kaohsiung-mice

また、安益グループが施設運営だけでなく、展示会やイベントの企画・運営・施工まで手がけているのも強いですね。高雄という産業集積のある都市にあること、高雄市が都市政策でMICEを10年以上にわたり育ててきたこと。施設運営、展示会の企画、地域産業、都市政策が繋がっているから、展示会の「後」を設計できるのではないでしょうか。

「台湾MICE回廊をゆく」は全7本の大型企画です
今後、台北、台南、高雄での取材記事を9月にかけて、合計7本公開予定です。台湾MICEの「いま」を知っていただける大型連載企画です。

※本記事の写真は特に記載がない限り、MICE TIMES ONLINE編集部の撮影によるものです。


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