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【レポート】追手門学院大学・岡田ゼミ、5名の学生がタイ12日間で向き合ったMICE×CBTの可能性「観光地を見る」から「地域と関わる」へ

追手門学院大学地域創造学部・岡田ゼミの学生5名が、2026年9月13日から24日まで、タイで11泊12日のフィールドワークに取り組みました。前半はタイ東北部のコンケンで、地域住主体の観光、コミュニティ・ベースド・ツーリズム(CBT)を体験。後半はバンコク、アユタヤへ移動し、都市型MICE、国際機関、ユニークベニュー、エクスカーションの受け入れを学びました。
今回のテーマは「持続可能な観光推進におけるMICE×CBTの接続による可能性」。国際会議や企業イベントで都市を訪れた参加者を、地方の暮らしや文化へどうつなげるのか。一方で、地域本来の環境や生活を守りながら、来訪者をどう受け入れるのか。学生たちは、整備された観光施設だけを見るのではなく、地域の人々と同じ場所で過ごし、自分自身が感じた戸惑いや不便さも含めて考えました。

※本記事は岡田美奈子氏のレポートをもとに、記事としてMICE TIMES ONLINE編集部が再構成したものです。

集合写真

岡田美奈子氏と岡田ゼミについて

追手門学院大学 地域創造学部教授。英国サリー大学大学院で観光経営学修士を取得。旅行・観光分野の企業や研究機関での実務・研究経験を経て、2023年から現職。専門は観光経営学、観光マーケティング、サステナブルツーリズム、コミュニティ・ベースド・ツーリズム(CBT)、MICEなど。地域主体の観光を通じた持続可能な地域づくりや、観光とウェルビーイングの関係を研究している。岡田ゼミでは「サステナブルツーリズム×リジェネラティブツーリズム」をテーマに、国内外でのフィールドワークを重視。持続可能な観光地域づくり、交流・関係人口、MICEとCBTの接続などを、地域の現状や課題を踏まえながら実践的に学んでいる。

12日間でコンケン、バンコク、アユタヤへ。MICEとCBTを現地で考える

MICEは企業会議、インセンティブ旅行、国際会議、展示会・イベントなどのビジネスイベントを指します。今回のフィールドワークでは、MICEとCBT(コミュニティ・ベースド・ツーリズム)をどう結びつけ、持続可能な観光や地域づくりにつなげられるのかを現地で考えました。

前半の訪問先はタイ東北部の中心都市・コンケンです。追手門学院大学とMOUを締結するコンケン大学 経営学・会計学部 付属ビジネススクールと連携し、MEKIN FARM、Rai Tan Khun Phaendin、Ease Ashramなど、地域住民の暮らしと密接につながる場所を訪問しました。
後半はバンコクへ移り、タイ国政府コンベンション&エキシビションビューロー(TCEB)、太平洋アジア観光協会(PATA)、ジム・トンプソンの家などを視察。最後はアユタヤで、MICE参加者向けエクスカーションの受け入れ環境を体験しました。

コンケンでは農園、学校、寺院、市場など住民の生活に近い場所へ入り、バンコクでは国のMICE政策、国際機関、ユニークベニューを学びます。都市型MICEと地方型CBTという性格の異なる二つの環境を続けて体験したことが、学生たちの観光やMICEを見る視点を大きく広げました。

行き先内容
コンケン 9/14-9/19地方部・CBT拠点
バンコク 9/20-9/23都市部・MICE拠点
アユタヤ 9/23歴史観光拠点
CBT(Community Based Tourism/コミュニティ・ベースド・ツーリズム)
地域住民が主体となって企画・運営する観光の考え方です。大規模な観光施設をつくるのではなく、その土地の自然、文化、食、暮らし、人との交流そのものを地域資源として生かします。観光客を呼ぶだけでなく、地域の生活や環境を守りながら、来訪者との交流や消費を地域の利益につなげていくことを重視します。
コンケン大学

コンケン大学の学生と「1日MICEエクスカーション」を考える

コンケンで最初に行われたのは、MICEとCBTに関する講義です。現地学生と一緒に授業を受けた後、合同グループをつくり、「コンケンにおける1日MICEエクスカーション」を企画して発表しました。

日本側の学生も今回のフィールドワークの目的をプレゼンテーションしました。専門知識や英語での交流に不安を感じながらのスタートでしたが、同年代のコンケン大学生が堂々と発表する姿から刺激を受けます。
午後は現地学生の案内で寺院やナイトマーケットを巡り、一緒に街を歩き、食事をする中で少しずつ緊張もほぐれていきました。

コンケン大学

CBTは、地域住民が主体となって企画・運営する観光の考え方です。その土地の自然、文化、食、暮らし、人との交流を地域資源として生かし、来訪者による消費や交流を地域の利益につなげながら、生活や環境を守ることを重視します。

MEKIN FARM

キノコ狩り、料理、山登り 地域の日常そのものを体験する

MEKIN FARMでは、キノコ狩り、カゴ編み、調理体験に参加しました。オーガニック野菜やエディブルフラワーを使った料理を作り、地元食材を使った昼食を味わいます。オーナー&創始者のChongrak Charuphanngam氏からは、農園と地域コミュニティとの関係について話を聞きました。

Phu Wiang地域では恐竜博物館や模擬発掘を体験し、地域食材を使ったローカーボンディナーを楽しみました。翌朝はサイドカーで山を登り、山頂で地域の人たちが作ったスティッキーライス、卵焼き、唐揚げ、地場野菜などの朝食をいただきます。食後にはコーヒーやハーブティー、瞑想、地元女性による伝統歌唱が用意されていました。

別の集落では、地域の素材を使ったブレスレット作りや伝統行事「Wax Castle」を体験。かつて小学校だった「Yellow Building」では、地元の小学生と演奏を通じて交流しました。

農園で食材を採る。地域の人と食卓を囲む。学校で子どもたちと演奏する。住民にとっての日常が、外から訪れる人にはその土地を深く知る体験になります。学生たちは、観光の価値を有名な施設や名所だけで考えるのではなく、暮らしや人との関係から見るようになっていきました。

シティツアー

「早く快適なホテルに帰りたい」不便さから始まったCBT

一方、学生たちは最初からコンケンでの生活を受け入れられたわけではありません。放し飼いの動物、昆虫、強い日差し、水のシャワー、非水洗トイレ。日本の都市生活とは大きく異なる環境に直面しました。
当初は、「早く快適なホテルに帰りたい」という声も出ました。

その印象を変えていったのが、地域の人たちとの関係でした。虫や日差しを避けられるよう気遣い、マーケットでは学生が食べやすいものを一緒に探してくれました。言葉が十分に通じなくても、表情や身振りから相手の気持ちは伝わります。
学生たちも次第に自分から笑顔や身振りで意思を伝え、地域の人との交流に入っていくようになりました。

最終日の意見交換では、学生から受け入れ環境について具体的な提案も出ました。
「シャワーは、お湯がほしい。トイレも水洗がいい、虫避けなどの蚊取り線香も必要」などなど。食事の量、雨天時の代替プログラム、来訪者がお金を使いたくなるような商品や購入できる場所の設置についても意見を伝えました。

地域側には、電源やWi-Fiから離れ、自然の中で過ごす環境自体を大切にしたいという考えがあります。すべてを便利にするほど、その場所ならではの体験が薄れる可能性もあります。
学生たちは、自分たちの快適さだけを求める立場から、地域が何を守り、どんな人を受け入れたいのかまで考えるようになりました。

Ease Ashram

5つ星ホテルから自然の中へ Ease Ashramで考えた「豊かさ」

Ease Ashramでは、創設者Nuch氏の生き方にも触れました。Nuch氏はバンコクの5つ星ホテルでキャリアを重ねた後、自然と共生する暮らしを求めて土地を購入し、ホテルを退職しました。収入は以前より減りましたが、現在の生活を楽しんでいます。

Ease Ashramには温水シャワーや水洗トイレがなく、エネルギー使用も抑えられています。到着時には戸惑っていた学生たちも、オーナーのSunisa Singkhorn氏の細やかな心遣いに触れ、やがて親しみを込めて「ママ」と呼ぶようになりました。
夜にはキャンプファイアーを囲み、人生やコミュニティについて語り合いました。便利さや物の多さだけを豊かさの基準とせず、自然とともに暮らす別の価値観に接した時間でした。

周辺の小学校では、学校と地域が共同で管理する農園を見学。児童が野菜を育て、その収穫物や地域から提供された食材が給食に使われています。学生たちは子どもたちへの絵本の読み聞かせにも参加しました。
寺院、学校、農園、給食、市場といった日常の場所が、人との交流を通じて来訪者の記憶に残る体験へ変わっていきます。

コンケン滞在の最後には、ここまでの学びを「MICE×CBTの接続提案」として整理し、コンケン大学で発表しました。実際に体験した不便さも含め、受け入れ環境をどう改善するか、地域らしさをどう残すかを自分たちなりに考えました。

TCEB

バンコクで国家政策としてのMICEの推進について学ぶ

後半はバンコクへ移動し、チャオプラヤー川のリバークルーズ、アジアティーク・ザ・リバーフロント、ジム・トンプソンの家などを巡り、都市型MICEやユニークベニューの事例を体験しました。

TCEBでは、タイ国家としてのMICE戦略と人材育成について学びます。学生たちも、コンケンで体験した3つのCBT拠点とMICEをどう結びつけられるか、旅行者として感じた改善点を英語で発表しました。

ここで重要な示唆を受けました。地域に魅力があっても、それだけでMICE参加者を受け入れられるわけではなく、地域側がMICEを理解し、受け入れの知識や体制を整える必要があります。コンケンで地域の魅力を体験した学生たちは、バンコクでは、その魅力を実際のMICEプログラムとして成立させるための課題を考えることになりました。

PATA

PATAで出会った同年代の若者 世界で働く姿が刺激に

PATA本部では、持続可能な観光や若手人材育成について学び、世界各地から集まるインターンシップ生とも交流しました。自分たちと近い年齢の若者が、国際的な組織で積極的に発言し、実務に携わる姿を目の前で見ます。
その交流から、「自分も世界を舞台に挑戦してみたい」という思いを持った学生もいました。

コンケン大学でもPATAでも、同年代との交流は大きな刺激になりました。英語を完璧に話せるかよりも、自分から発言し、まず行動する。その姿勢を目の前で見たことが、自分自身の行動を考えるきっかけになっています。

アユタヤ

アユタヤでMICE参加者のエクスカーションを考える

旅の終盤にはアユタヤを訪れました。バンパイン宮殿、日本人街跡、ワット・ロカヤスタ、ワット・マハタート、ワット・プラシーサンペットなどを巡り、象乗りやリバークルーズも体験しました。
ここで見るべきものは観光名所だけではありません。大型MICEの参加者がオプショナルツアーとして訪れた場合、交通はどうするのか。食事をどこで提供するのか。多言語での案内は可能か。限られた時間で何を体験してもらうのか。コンケンのCBTとは異なる、観光客の受け入れ基盤が整った地域からもMICEとの接続を考えました。


タイツアー

参加した学生たちの声 価値を感じる基準が変わった12日間

12日間の中で、学生たちの受け止め方は変わっていきました。コンケンへ入った当初の、「早く快適なホテルに帰りたい」という反応は、地域の人たちと交流を重ねる中で、「本当に楽しい・学びが多い」へと変わりました。

5人が持ち帰ったものはそれぞれ異なります。食と観光の関係からガストロノミーツーリズムに関心を深めた学生、コンケン大学の同年代から刺激を受けた学生、Ease Ashramで利便性と地域らしさのバランスを考えた学生もいました。
地域の人に助けてもらった経験から、地域活性化を「外へ出ること」ではなく、その土地で暮らし続けられる環境をつくることとして考えた学生もいます。

共通していたのは、観光を見る基準の変化です。施設が豪華か、快適かだけで評価するのではなく、人との距離、食、暮らし、その地域でしか得られない経験へ目を向けるようになりました。

タイツアー.

MICE×CBTを体験から学ぶ 参加者から企画する側へ

今回のフィールドワークでは、都市型MICEのバンコクと地域主体のCBTを実践するコンケンを行き来することで、学生たちのMICEに対する理解も広がりました。

MICE参加者の経験は、会議場だけで完結しません。空港からの移動、宿泊、食事、地域での文化体験、人との交流、エクスカーションまでが開催地の印象をつくります。学生たちはコンケンで、その土地の日常や人との関係が参加者に強い印象を残すことを体験しました。バンコクでは、それをMICEとして提供するための政策や受け入れ体制について学びました。

次の課題は、参加者として感じた魅力を、主催者・誘致側の視点で企画に変えることです。資金計画、スポンサー、ビジネスマッチング、地域への経済効果を考え、受け入れる地域にも利益が残る形をつくる必要があります。会議のテーマや参加者と地域をどう組み合わせるのか、その場所で開催する意味をどうつくるのかという視点も重要になります。

11泊12日のフィールドワークは、地域を見る側だった学生たちが、地域と来訪者の双方から観光やMICEを考える機会になりました。食、文化、暮らし、人との交流をどのようにMICEへつなぐのか。その答えを考えるための材料を、学生たちはタイの現場から持ち帰るものとなりました。

参考URL

追手門学院大学 Webサイト
地域創造学部 地域創造学科 教授 岡田 美奈子氏 紹介ページ

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