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MICEメシ(グルメ)、食の話題

【特別寄稿】2030年へのマイルストーン:大阪・関西万博が遺したものと、次世代へ繋ぐガストロノミーの力

14歳でフランス料理の世界に魅了され、世界各国との共創に取り組んできたフレンチシェフ ・グローバルイノベーターである杉﨑宏さん。大阪・関西万博、G20大阪サミット、ガストロノミーツーリズム世界フォーラムなどの国際舞台で経験を重ねてきました。この記事は、そんな杉﨑さんの特別寄稿です。多くの国際イベントを見てきた杉﨑さんが万博、MICE、ガストロノミー、そして2030年へ向かう日本の可能性を見つめます。自分の身近な日常が世界とつながるヒントになることでしょう。

大阪・関西万博(編集部撮影)

夢洲から始まった「未来社会のデザイン」

昨年の今頃、大阪・夢洲の地に世界中が熱視線を送っていたことを覚えているだろうか。MICE(展示会・国際会議)の世界最大級の祭典、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)である。

日本では、1970年の大阪万博と比較されることも多かったが、この国際博覧会は単なるイベントではなく、世界最大の集客力を誇る「国際的な商談会」としての顔を持つ。2,000万人を超える来場者数は、オリンピックやワールドカップといった世界的スポーツイベントをも凌駕する規模であり、日本が世界とパートナーシップを結ぶ極めて貴重な機会であった。

しかし、この万博の会期中、各パビリオン内や各国のナショナルデーに合わせて、「世界各国の要人を絡めた世界最大の商談会」が連日のように開催されていた事実は、一般にはほとんど知られていない。これこそが、MICEとしての万博が持つ真の価値なのである。

閉幕から7ヶ月が経過した今、日本は大きな変革の最中にある。昨秋、高市早苗閣下が日本初の女性首相に就任して以降、外交のスピード感は加速した。昨年度末から今年3月末までにG7の全首脳が日本を訪れた事実は、万博という「場」がもたらした外交的・経済的インフラが、いかに機能しているかを物語っている。

日本のイニシアティブと「2030年」のメガ・ラッシュ

あまり知られていないことだが、今や世界を席巻するAI(人工知能)の議論を、世界の外交舞台で初めて提案したのは日本である。2016年のG7伊勢志摩サミットに端を発し、2023年の広島サミットで世界初の「AIサミット」を実現させた。この日本のイニシアティブこそが、現在のAI変革の基盤となっている。

そして視線は、次なる変革の年「2030年」へと向かう。2030年は、MICE・世界的スポーツイベントが奇跡的に重なる、歴史的な1年となる。

  • 冬季オリンピック・パラリンピック大会(フランス)
  • FIFAサッカーワールドカップ(スペイン・ポルトガル・モロッコを軸とした100大会を記念して開幕戦は、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイで行われ3大陸6カ国開催)
  • 国際博覧会(サウジアラビア・リヤド)

この「メガイベント・ラッシュ」の年に、日本は再びG7議長国を務める。G7は決して遠い世界の出来事ではない。大学生が参加する「ユースサミット」があり、各地で開催される大臣会合や首脳会議は、その地域の最先端技術や文化を世界へ発信する最大の「MICE」なのである。

ミラノ万博 日本館 待ち時間パネルの前で記念撮影する人がいたほどの人気(写真提供 万博マニア 二神敦様)

ガストロノミーが牽引する「日本のブランディング」

日本の食(ガストロノミー)が世界に大きな反響を与えていることをご存知だろうか。
ガストロノミー=高級料理、贅沢な料理と言われていますが、そうではない。「料理・料理法と、人類の文化・社会・歴史を深く結びつけて考える学問・アプローチ」を意味しており、「“食の背景にあるストーリーまでを味わい、愉しむ文化」を指す。日本はこの分野で世界トップランクであることは日本では殆ど知られていない。

昨年、訪日外国人客数は4,200万人を突破し、その70%以上が「食」を訪日目的に挙げている。ミシュランガイドにおいて、東京は19年連続で世界一、京都、大阪と、ベスト5のうち3都市を日本が占めている事実は驚異的だ。ベスト10まで広げても3都市も長年ランクインしているのは、日本だけである。

この「ガストロノミー」の評価を世界的なものにしたきっかけも、実は万博であった。2015年のミラノ万博(テーマ:食)において、日本館は8時間待ちの行列を作るほどの人気を博した。そのパネルが記念スポットになったほどだ!
それまで「SUSHI」「TEMPURA」と単品料理のイメージだった日本食が、この時初めて「お膳(コース料理)」という文化として世界に認識されたのである。

国連世界観光機関ガストロノミーツーリズム奈良サミット2022年12月14日(写真提供: Le Cœur Inc)

奈良から世界へ:「ガストロノミー」の新たな定義

万博へと至るプロセスの中で、極めて重要なマイルストーンがあった。2022年に奈良で開催された「第7回UNWTOガストロノミーツーリズム世界フォーラム」である。

このフォーラムにおいて、日本の精神文化の根幹を成す「守破離(Suhari)」「侘び寂び(Wabi-sabi)」、そして「おもてなし(Omotenashi)」という概念が共同宣言の中に盛り込まれた。日本の精神性が、世界共通のガストロノミーの指針として正式に採択された瞬間であった。

国連世界観光機関ガストロノミーツーリズム奈良サミット2022年12月14日(写真提供: Le Cœur Inc)

ここで改めて「ガストロノミーツーリズム」の定義を整理しておきたい。2017年、国連世界観光機関(UNWTO)はスペインのバスク・キュリナリー・センター(BCC)と共同で、その概念を2017に以下のように定義した。

「ガストロノミーツーリズムとは、旅行者がその土地の食文化、食材、調理法、そしてそれらに付随する伝統や歴史を体験することを主目的とする観光の形態である。それは単に『食べる』ことにとどまらず、地域のアイデンティティや持続可能性、文化遺産の保護と密接に結びついたものである」

この定義は、単なる美食の追求ではなく、文化の継承と地域経済の活性化を両立させるMICEの核となる考え方である。

キーワード:ガストロノミー

食を単なる料理や味だけでなく、文化、歴史、地域性、風土、生産者、食材、調理技術、食体験まで含めて総合的に捉える考え方です。地域の食文化を深く理解し、食を通じて土地の魅力や価値を伝える分野でもあります。観光やMICEでは、地域らしさを体験として届ける重要な要素になります。

国家プロジェクト「ムーンショット」との連携と世界への反響

2050年カーボンニュートラル実現へ国家プロジェクト「ムーンショット」が大学から世界へ飛躍する

ガストロノミーの概念を、単なる文化論から科学的な社会実装へと引き上げたのが、日本の国家プロジェクト「ムーンショット型研究開発制度」との連携である。2022年奈良で開催した国連世界観光機関主催したガストロノミーツーリズム世界フォーラムの反響が大阪・関西万博で海外参加国は大きなムーブメントを築いた。

弊社が支援している山形大学工学部古川英光卓越研究教授が採択された「ムーンショット」(目標5)は万博で「食」をテーマにしたパビリオン「Earth Mart」で「進化する冷凍食」を常設展示や「食品ロス改善策」の革新的なプログラムが披露された。具体的には、最新のフードテックや3Dフードプリンティング、さらには資源循環型の未利用食材活用モデルが披露され、ハンガリー大統領夫妻をはじめとした世界の要人や専門家が集うMICEで提供。「サスティナブル・ガストロノミーの極致」として大きな反響を呼んだ。

特に、日本が持つ「もったいない」の精神をテクノロジーで具現化した姿勢は、環境意識の高い欧州諸国を中心に「世界のガストロノミー変革」として、注目を集めている。更に進化した形を今月末はスペインでの披露など日本から世界へ飛躍を遂げている。

国連世界観光機関主催ガストロノミーツーリズム世界フォーラム2024バーレーンサミット
前事務総長ズラブ・ポロリカシヴィリ閣下と共に

次世代へのメッセージ:当たり前の中に眠る「世界基準」

若い世代の皆さんに伝えたいのは、皆さんの日常にある光景が、世界にとっては驚異的なコンテンツであるということだ。
例えば、水道水が飲める国は世界にたった12カ国しかない。この豊かな水質こそが、日本の食文化の根幹を支えている。
また、ポルトガルの「テンプラニーニョ」を「天麩羅」へと昇華させたような、日本の卓越したアレンジ力は世界的に見て極めて稀な才能である。

現在、日本政府は2030年に向けて食の輸出量を5倍に引き上げる目標を掲げている。ここで重要になるのは、独自の進化を遂げた日本の食材や技術を、いかに世界の食文化に変革をもたらす存在として「定着」させるかだ。

その鍵を握るのが、日本が持つ大きなアドバンテージ、「心理的安全性」である。
このテーマについては、次回の寄稿で深く掘り下げていきたい。


筆者:杉﨑 宏(Hiroshi Sugisaki)
フレンチシェフ ・グローバルイノベーター

14歳でテレビで観たフランス料理の世界に魅了され、19歳でフランスへ渡る。以降、フランスを軸に活動。その最中2008年不慮の事故に遭い社会復帰絶望と告げられたが、世界中の支援により8年のリハビリを経て2016年社会復帰。2017年東京パラリンピック大会有識者会議へ招聘。その際、インテリジェンスが世界と日本に大きな隔たりがあること知り、グローバルイノベーターとして世界各国と数多く共創を企てる。

昨年の大阪・関西万博初め2019年ラグビーW杯、G20大阪サミット、TICAD7(第7回日本アフリカ開発会議)など海外側のアドバイザーなどを務め世界から高評価を得る。2022年国連世界観光機関ガストロノミーツーリズム世界フォーラム奈良サミットでは、全てのカテゴリーに参加した唯一の日本人として高評価を得る。2023年から日本側にも参画。地方創生から国家間GDP成長へ繋がる両国の外交及び友好関係の発展に数多く寄与。

2017年より「夢実現プロジェクト」と題して、最年少3歳から40代女性まで国内外150人を支援。資金提供ではなく、「場づくり」を提供し、自らのポテンシャルが世界で通用する部分と課題、改善を明確にすることにより、自ら世界の舞台へ歩める素地を提供。ユース世代から数多くの世界で活躍する人財育成に寄与。

モットー : 世界へ羽ばたくサンフレッチェ
・「今ある各々のポテンシャルとアイデンティティは、世界へ羽ばたくことができる」
・「限界突破のヒントは自分にある」
・「自信のメカニズムを知れば世界へ羽ばたくことができる」

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