【取材】AIを学ぶ大学生が「教育総合展(EDIX大阪2026)」へ。AIは課題解決の手段として使われていた
AIを学んでいる情報系の大学生の濱田和磨です。2026年10月15日(木)、グランキューブ大阪で開かれた教育総合展「EDIX大阪2026」を訪れました。

行く前には仮説を立てていました。それは「教育現場のAIはある程度進んでいるが、AIならではの問題も当然あるはずだ」。AIはどこまで進み、どんな課題を解決しているのかを確かめに行きました。
取材を通して見えたのは、AI技術は目的ではなく「課題」を解決するための手段にすぎない。そしてどのサービスも、人と人の「繋がり」をつくっていました。その繋がりがあるから、子どもたちは自分の足で進めるのです。
同世代の学生のみなさんも「自分ならどうだろう」と置き換えながら読んでみてください。各ブースには、私なりの「星★」もつけました。(ブース同士を比べるものではありません)

※2026年10月15日(木)に取材しました。
※ブースで触ったものは「触ってみた」、見聞きしたものは「見てきた」と表記しています。

EDIX(教育総合展)大阪2026の開催概要
会期:2026年10月13日(火)〜15日(木)
会場:グランキューブ大阪
主催:EDIX実行委員会
企画運営:RX Japan合同会社
公式サイト:https://www.edix-expo.jp/osaka/ja-jp.html

見てきた:分からない問題を、AIと一緒に考える(Hanji「Knock」)
高校時代に欲しかった度:★★★★★
AIといえば「質問すれば答えを返してくれる、先生の代わりのようなもの」と考えがちでした。ブースで見たAIのサービスは、少し違う使い方をしていました。
Hanjiの「Knock」は、中学生・高校生向けのAIチューターです。分からない問題を写真に撮ると、AIが一緒に問題に向き合ってくれます。国数英理社に加えて、工業系などの専門科目にも対応していて、工業高校への導入実績もあるとのこと。「授業をあきらめかけてたけどついていけるようになった」という声も紹介されていました。
正直に言うと、機能だけを見れば、GeminiやClaudeなどの既存のAIサービスと大きくは変わらないと感じました。それでも、教育用として学校などの団体向けに提供されているため、「どうプロンプトを書けばいいか分からない」という人でも、あらかじめ調整されたKnockなら、すぐに使いこなせるはずです。

Knockが工業系の科目にも使える点が、特に良いと思いました。
私は工業高校の建築科の出身です。建築設計の授業で荷重計算をしたときや、計算技術検定2級の勉強をしたとき、テキストだけでは全く分かりませんでした。その式や値がどこから出てきたのか。そこが分からないのです。これは、数学が苦手な人にも当てはまると思います。そういうときに一緒に考えてくれる相手がいたらと思いました。
Knock Webサイト https://knock-snap.jp

見てきた:答えを教えないAIで、自分の頭が整理される(ミマモルメ「ゲームプログラミングラボ」)
自分で考える力が育ちそう度:★★★☆☆
ミマモルメの「ゲームプログラミングラボ」は、ゲーム開発アプリ「Godot」に生成AIを組み合わせ、チャットボットと一緒に考えながらプログラミングを学べるサービスです。
これまでの生成AIサービスをGodot(ゴドー)に繋げるには、プラグインを入れて設定するなどの手間がありました。それが、あらかじめ済んでいます。さらにAIが答えを直接教えないよう指示されています。担当の方は、AIに任せているうちに失われやすい「自分で考える力」を身に付けてほしいと話していました。

今のAIの使い方として合っていると感じました。学ぶ側としても、とても助かります。途中まで考えて分からなくなったとき、どう考えたかを順序立ててAIに説明していくと、送信する前に「あれ、これってこういうことじゃない?」と気づくことがあります。AIに考えたところを伝えるだけで、自然と思考が整理されるのです。
一方で、好ましい教え方は人によって違うはずです。プログラミングが苦手な生徒向けの調整はこれからだそう。自分に合った教え方を選べるようになると、なお良いと思いました。授業の動画もあるため、詳しくない先生の負担も減らせます。
ゲームプログラミングラボ Webサイト https://proglab.games

触ってみた:「手を挙げなくても、質問できる」(Metamoji「ClassRoom3」)
授業で使ってみたい度:★★★★☆
Metamojiの学校向けタブレットアプリ「ClassRoom3」は、ペーパーレスが特徴のノートのWebアプリです。先生と生徒のタブレットがリアルタイムで繋がっていて、先生が生徒のノートを編集することも、生徒同士でノートを編集することも、全員が一斉に書き込むこともできます。教科書や資料集もPDFなら取り込めます。
実際に書いてみて、反映の速さに驚きました。自分が書いたものが、そのまま他の生徒や先生のタブレットに出ます。教室の前に画面を映せば黒板に書く必要もなく、タブレットだけで完結します。

インパクトがあったのは、質問しにくい生徒がボタン1つで先生に知らせられる機能です。分からないことがあっても、すぐに聞けない。授業を止めてはいけない気がするし、みんなが静かに聞いている中で手を挙げるのは恥ずかしい。そんな経験は、中学・高校だけでなく、今の大学生にもあると思います。受講人数が多い大学の授業なら、なおさらです。
ボタン1つなら、声を出さなくても伝えられます。ブースでは「先生に気軽に質問できる」という生徒の声も紹介されていました。これなら私も質問ができそうです。
このアプリはいわゆる生成AIを使っていませんが、生徒同士や先生と生徒の繋がりが、目に見えないところで強まっていく仕組みだと感じました。
ClassRoom3 Webサイト https://product.metamoji.com/classroom/

見てきた:人と人を繋ぐ、バーチャル空間(クラスター「cluster for Education」)
人と繋がれそう度:★★★★★
クラスターの「cluster for Education」は、3D空間の中で授業や交流ができる、教育向けのメタバースです。導入先は教育機関800以上にのぼります。生徒自身が、ブロックを置く感覚で空間(ワールド)を作ることもできます。
全体を通して、一番印象に残ったのがここでした。学校での繋がりから離れてしまう子は、少なくないと思います。授業についていけなくなって不登校になる子もいれば、学校の人間関係が理由で通えなくなる子もいます。悩みを周りの大人や友達に相談できず、一人で抱え込んでしまう子もいるでしょう。ブースでは、長期の療養などで学校に通えない子どもにも、バーチャル空間を提供した事例があると聞きました。実際にバーチャル空間にいる生徒さんたちと交流しました。

実際にバーチャル空間にいる生徒さんたちと、交流するデモ体験をしました。現地にカメラとパソコンを置くと、カメラの映像がバーチャル空間にいる生徒たちにリアルタイムで映り、会話もできます。海外や火山のような、実際には行きにくい場所とも、同じ空間にいる感覚で繋がれます。画面の向こうの人とやりとりできることに、素直に感動しました。
自分がバーチャル空間に入る側だったら、と考えてみました。チャットで話せるのは気軽でいいですし、ボイスチャットができたら楽しそうです。生徒が多いと声が重なって聞こえにくくなるかもしれませんが…。そして小学生の頃を思い出しました。仲の良かった友達が数年間入院していて、会えなくて寂しかったのです。あのとき、こういう場所があったら、と思わずにいられませんでした。
cluster for Education Webサイト https://www.educator.cluster.mu/

歩いて見えた共通点:届けようとしていたのは「学び」だけじゃなかった
回ってみて気づいたのは、どのサービスも、取り残されやすい人に届くことを意識していた点です。見聞きした範囲では、次のような場面がありました。
– 手を挙げにくい生徒が、ボタン1つで先生に質問できる(Metamoji)
– 授業をあきらめかけた生徒が、AIの解説でついていけるようになる(Hanji)
– 学校に通いにくい子どもが、バーチャル空間で繋がる(クラスター)
総合型選抜・学校推薦型選抜の対策AIツールを展開するCeeGlassのブースでも、同じ視点を感じました。担当の方は、地域差なく、どこでも指導を受けられるように届けたいという思いを語っていました。
教育ITは、勉強を効率化するだけでなく「学び」と「繋がり」の入口を増やしていました。その繋がりがあるから、子どもたちは自分で進んでいける。ここにも、繋がりがあると思いました。

導入の課題:先生の不足、レベルの調整、そして個人情報
一方で、現場の課題も聞こえてきました。
ミマモルメの担当の方は、情報の授業に力を入れたくても、教えられる先生が足りないことを挙げていました。「情報に詳しくない先生でも教えられるので助かる」という声がある一方で、「学校や生徒によってプログラミングのレベルを合わせられるとなお良い」という要望も紹介されていました。Knockについても「小論文でも使えたらいいな」という声がありました。
個人情報の備えも欠かせません。セキュリティを手がけるHENNGEのブースでは、生徒の個人情報漏洩を防ぐため、ID・パスワード・メールをクラウド上で管理する仕組みを紹介していました。「SaaSを安心して使える状態を目指したい」と話していました。
今回見聞きした範囲では、AIへの強い不信感や大きな不安の声は、あまり聞かれませんでした。ただ、出展する側の場だからこそ、課題が語られにくかった可能性もあります。

展示会は触って、聞ける場所
行く前の私は、教育現場のAIを「どこまで進んでいるか」という技術の目線で見ていました。ところが実際に見えたのは、AIを目的にするのではなく、課題を解決する手段として使うということでした。展示会の良さは実際に触って、画面を見て、担当者に直接聞けることです。多くの人と技術が集まり、出会いが生まれる場でもあります。
AIを触ってみたい人、教育の場で使えるものを作ってみたい人は、次の展示会で気になるブースにひとつ質問してみてください。技術の話だけでなく、その技術が誰のどんな課題を解いているのか。そこに、思いがけない発見があるかもしれません。
※取材:京都橘大学 3年生 濱田和磨 / 編集:編集長 藤井




