お客様とともに一つひとつの目標を形にし、次の挑戦へ。プロジェクトマネジメントが好きだからこそ、イベント制作の現場で挑戦を続ける。ドビアン・ガエルさん/株式会社マッシュ【MICEキャリアナビ】
イベントづくりは、どこまで考えるのでしょうか。
プログラムの内容から、参加者同士の交流が生まれる空間づくりまで、一つひとつに綿密な工夫が込められています。フランスの大学院で国際プロジェクトマネジメントを学び、日本でのインターンシップを経て株式会社マッシュに入社したドビアン・ガエルさん。2019年入社し8年目になります。企業向けのイベントやセミナーなどを手がけるプロジェクトマネージャーとして活躍しています。
ドビアンさんがやりがいを感じるのは、プロジェクト全体を動かす仕事そのもの。主催者の期待を超える提案を考え、協力会社と調整を重ね、問題が起きれば解決策を探る。クライアントとともに目標に向かってプロジェクトを進め、その成果が形となって現れる瞬間に、大きなやりがいに面白さを感じています。
今回は、MICE・イベント制作の現場で働くドビアンさんの仕事への思いや、その魅力に迫ります。

細部まで妥協せず、自ら探して主催者の期待を超える空間をつくる
イベントづくりには、企画や空間の演出、テクニカル機材とその他の備品の手配、主催者や協力会社との調整など、さまざまな側面があります。
ドビアンさんが主に担当するのは、企業向けのイベントです。例えばセミナー、展示、GALA、式典など。
以前、高級ホテルで、海外のBtoBクライアントを迎える交流会の空間づくりを担当しました。こうした交流会では、会場の雰囲気も大切です。ホテルに備え付けられた椅子やテーブルを利用する場合もありますが、このときはクライアントの要望により、ホテルの備品ではなく、よりイベントの雰囲気に合う家具を用意することになりました。
高級感のあるリース家具は見つけるのが簡単ではなく、当時の会社のネットワークにもなかったため、ドビアンさんは自らデザイン性の高い家具を扱うリース会社を探し、椅子やテーブルを手配しました。その結果、クライアントには家具と会場の雰囲気の両方を大変気に入っていただき、翌年以降もこの年次イベントでは「同じ家具を使い続けてほしい」との希望がありました。
その後の仕事にもつながります。領事館主催のイベントや、大手企業がクライアントを迎えるレセプションなどでも、同じ会社の家具が継続して利用されています。
「ドビアンさんは、求められているのは何かを常に考え、最善と思えるものを躊躇なく探し出す行動力があります」と同社執行役員の塩川さんは話します。
主催者自身がまだ言語化できていないニーズを汲み取り、イベントの細部にまで目を向けて動く。ドビアンさんの仕事への姿勢が現れています。

トラブルを経験するたびに、対応の引き出しが増えていく
協力会社から手配できると聞いていたテクニカル機材が、後から用意ができなくなる。希望する備品の数がそろわない。主催者と確認した内容を見直さなければならない場面もあります。また、イベントの開催中や終了後にも、主催者の期待と実際の仕上がりにズレが生じる場合があります。
ドビアンさんが大切にしているのは「アクティブリスニング」「根拠に基づいて話す」「自分や相手の不満につながりうる内容でも、誠実に向き合ってお伝えする」。
まずは相手の要望や気持ちを受け止め、不満にも丁寧に耳を傾けます。そのうえで、できないと伝えるだけで終わらせず、なぜその状況になったのかを説明し、主催者の要望に沿った代案を考えます。他の協力会社から同じ要件を満たす商品を探す。同じ協力会社と手配可能な商品を検討する。状況に応じて実現できる方法を探ります。
経験を重ねるにつれて似た状況に直面しても、より早く対応できるようになりました。どれだけ準備をしても、残念ながらすべてのミスやトラブルを避けることはできません。大切なのはそこから学び、その経験を次に生かすこと。一つひとつ成長し、より良い対応ができるようになります。
プロジェクトを動かす面白さ。自分の得意分野を生かせるMICEの仕事
この業界で働く人が、全員イベントやエンターテインメントを好き…ではないのです。ドビアンさんが好きなのは、プロジェクトマネジメントそのもの。
クライアントとともに目標に向かい、計画を立て、関係者と調整しながら実現していく。ひとつの目標を達成したら、また次の目標へ。イベントは季節や案件ごとに内容が変わり、準備してきた成果が会場の雰囲気や、参加者の反応、クライアントの満足感として目に見えます。その過程に面白さを感じ、プロジェクトマネジメントのスキルをイベント制作に生かしています。
周囲には、音楽やステージ演出、照明など、それぞれ異なる分野への関心から同社に入った人たちがいます。同じイベントに携わっていても、興味を持ったきっかけや得意分野は人それぞれです。
「なぜこの仕事を選んだのかを聞くのも、楽しいと思いますよ」
さまざまな背景を持つ人たちが強みを発揮しながら、ひとつのイベントをつくり上げます。好きで夢中になって学んだ知識や、積み重ねてきた経験を仕事に生かせるのも、MICE業界の魅力です。

日常の仕事にも、思いがけないびっくりがある
イベントの準備では、思いがけないものがオフィスに登場する日もあります。あるとき、主催者から「参加者に温かい食べ物をふるまいたい」というリクエストがありました。そこでオフィスに登場したのは、さつまいもを温める機械です。お客様に提案するためには、まず自分たちが使い方や仕上がりを知る必要があります。新しい機材やアイデアも実際に試し、本番で使えるかを確かめます。そんな準備の時間にも、ドビアンさんは楽しさを感じています。新しいことを仕事として試せるのも面白いですね。
塩川さん「真面目な一面がある一方、楽しい企画を考えるのも好きです。自分の担当ではない案件にも、面白くなりそうなアイデアを出してくれます」
海外企業とのつながりをさらに広げ、長期的なイベント制作にも挑戦
ドビアンさんが今後目指しているのは、これまで築いてきた海外企業とのつながりをさらに広げ、日本でイベントを開催する際に、継続してマッシュに相談してもらえる関係を築いていくことです。また、一度きりのイベントで終わるのではなく、お客様と長期的に信頼関係を築き、共にイベントをつくり続けられるパートナーでありたいと考えています。
半年以上かけて準備する大規模な案件や、継続開催するイベントにも挑戦したいドビアンさん。特に関心があるのは、長期的なプロジェクト。課題を見つけ、より効率的な進め方を考える。経験を次の開催に生かし、少しずつ完成度を高めていく過程にも面白さを感じています。
プロジェクトマネージャーとして経験を重ね、今では同じ部署の若手社員から相談を受ける機会も増えました。以前、若手社員が提案書を作成する際、考えたアイデアがクライアントの要望に合っているのか、不安を抱えていたそうです。ドビアンさんは一緒に要望を整理し直し、提案書を読みながら内容を確認しました。提出後には、クライアントから良い反応があったといいます。
細かな部分を検討するときも、提案書を確認するときも、出発点は相手が何を求めているか。これまで培ってきた経験を若手社員にも共有しながら、自身も新たな目標に向かって進んでいます。

自分の「好き」や「得意」は、どんな未来につながる?
「イベント業界は楽しいですが、他の業界と同じように、良いところもあれば大変なところもあります。例えば『ステージやコンサートが好き』で業界に入ったとしても、毎日コンサートに関われるわけではありません。イベントの仕事は非常に幅広いです。だからこそ、自分の目標があるなら、それを大切にしてほしいと思います」
ドビアンさんが伝えたいのは、「自分は何を目指しているのか」という目標や、自分なりの軸を持ち続ける大切さです。一方で、経験や新しい出会いによって目標が変わることもあります。その変化を前向きに受け入れ、新たな目標を見つけていくことも大切です。
好きな分野や得意なスキルは、思いがけない形で生かせることもあります。例えば、部屋のコーディネートが好きなら、イベントのテーマに合わせた空間づくりにも通じるものがあるかもしれません。ドビアンさんのように、プロジェクトマネジメントの力を生かす人もいます。今の自分の「好き」や「得意」が、まだよく知らない分野や、これからのキャリアにつながるかもしれません。



