世界に関わる仕事は、地元にもある。宇都宮観光コンベンション協会で海外との商談から地域の受け入れまでを担うふたりに聞く【MICEキャリアナビ】
観光コンベンション協会では、どんな仕事をしている?宇都宮を国内外に紹介し、学会やイベントを呼び込むMICEの仕事
英語を使って海外の人と働く。そんな仕事を探すとき、どんな街を思い浮かべますか。宇都宮観光コンベンション協会の駒場さんは、東京で働いていた頃よりも、地元で海外の人と直接仕事をする機会に恵まれたといいます。担当するのは、学会や大会を街に呼び込むMICE(マイス)の仕事です。今回は、協会の吉野さんと駒場さんに、宇都宮への思いや日々の仕事、若い世代へのメッセージを聞きました。地元への愛着や英語への関心は、どんな仕事につながるのでしょうか。

宇都宮を開催地に選んでもらうために動く
宇都宮観光コンベンション協会は、学会や大会の誘致、開催の支援に取り組んでいます。主催者に宇都宮を開催地として選んでもらい、訪れた参加者に街で過ごしてもらうことが、地域の活性化につながります。
お二人が仕事を説明する際に挙げるのが、人口減少という社会課題です。自治体が移住や定住を促す一方で、協会は県外から訪れる人を呼び込む事業を担っています。学会や大会を通じて地域を訪れる人を増やすことが、宇都宮の取り組みの軸にあるといいます。
その仕事は、行政と連携して進めています。行政が企画立案や戦略づくりを担当し、協会は現場で主催者などの声を聞き、運営に関わります。そこで得た声を行政と共有し、次年度以降の戦略に反映させていく役割もあります。
行政には人事異動がありますが、誘致や開催支援には継続した取り組みが必要です。地域で活動を続ける協会が現場の経験を積み重ね、行政につなぐ。その関係を、お二人は協会の存在価値として捉えています。

宇都宮を知らない海外バイヤーに、何を伝えるかー東京、シンガポールの商談会での挑戦
誘致に向けた活動は、海外の人たちとの商談にも広がっています。東京開催の「VISIT JAPAN トラベル&MICEマート(VJTM)」や、シンガポールで開催された「Japan Incentive Travel Roadshow」では、各国のバイヤーとじっくり話すことができ、それぞれの関心や好みを知る機会になったといいます。
商談の相手が、宇都宮を知っているとは限りません。お二人が聞いた中には、東京や大阪などを巡るゴールデンルートに代わる、新しい訪問先を探しているという声もありました。そうした相手に、街の特徴や周辺地域を含めた過ごし方を提案しています。駒場さんが、海外に向けて紹介する際の強みとして挙げるのは、アクセスです。東京から新幹線で1時間以内に行けることに加え、大谷資料館や若竹農場など、宇都宮で訪れられる場所を紹介します。日光やあしかがフラワーパークを含め、栃木県内を巡るルートを組めることも魅力だと考えています。

「宇都宮」という名前を知らなくても、周辺の場所を紹介すると、以前訪れたことがあるという話になる場合もあるそうです。地名は知られていなくても、場所を紹介することで話が弾み、関心を持ってもらえたと感じています。課題として挙げるのは、街の知名度です。県内の訪日事業に関わるDMCとも連携し、地域の観光資源やサービスを磨き、宇都宮を含めた周辺地域の提案につなげようとしています。
DMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)とは
地域の観光資源や文化に詳しく、旅行やMICEの企画・運営を行う専門会社のことです。国際会議や企業の報奨旅行などで、宿泊・交通の手配、観光ツアーや特別な体験プログラムの企画などを担当します。地域ならではの魅力を活かし、訪れた人に特別な体験を提供する役割を担います。
FAMツアーとは
観光地や施設の魅力を知ってもらうために、旅行会社やメディア、イベント主催者などを招待して行う視察旅行のことです。FAMは「Familiarization(よく知ること)」の略。実際に現地を訪れ、ホテルや会議場、観光スポットなどを見学・体験します。MICEの分野では、国際会議やイベントの開催地として選んでもらうために実施されます。地域の魅力を直接伝え、将来の誘致につなげる大切な取り組みです。
地元の飲食店も、参加者を迎える仲間になっていく
学会や大会に参加するために初めて訪れた街で、どこに食事に行けばよいか迷った経験はないでしょうか。学会参加者のアンケートにも、「どこに行けばいいかわからない」「知らない街の知らない居酒屋に入るのが怖い」という声がありました。
こうした課題に関わる取り組みが、「SMILE MICE SHOP」です。MICE参加者を迎える店舗の情報を整え、街で食事などを楽しんでもらうための案内につなげています。きっかけは、観光庁の事業に採択された際に、地域の人たちへMICEを知ってもらうことが課題になったことでした。参加者や主催者に飲食店の情報を提供したくても、公的な団体として特定の店だけを紹介する難しさがあったといいます。
そこで協力したのが、地元の下野新聞社です。新聞社が店舗との交渉や取材を担当し、情報を取りまとめました。地元のメディアや店舗と一緒に、参加者を迎える仕組みをつくっています。
お二人には、地域の事業者にも、MICEが自分たちの商売につながることを知ってほしいという思いがあります。参加者が安心して店を選べることと、店にお客さんが訪れること。その両方につながる取り組みを目指しています。一方で、完成した情報を十分に発信できていないことは課題です。ウェブサイトでの見せ方などを改善し、参加者に届く案内にしていきたいと話します。

駒場さんが帰ってきたかった、宇都宮の「ちょうどよさ」
駒場さんは、宇都宮で生まれ育ちました。東京で暮らした経験もありますが、地元が好きで宇都宮に戻ってきたといいます。好きなところを尋ねると、挙げたのは地域のつながりや人の温かさ。どこかで人と人がつながっていることが、安心感につながっています。
駒場さんにとって、宇都宮は「ちょうどいい」街です。欲しいものが手に入り、東京へも行きやすい。西口の再開発が進む街の、これからの姿も楽しみにしています。地元に戻った駒場さんは、協会の仕事を通じて、海外のバイヤーと英語で直接商談しています。東京で働いていた頃よりも、生の英語を使い、海外の人と直接仕事をする機会に恵まれたそうです。
好きな街に暮らしながら、海外の人にその街を紹介する。駒場さんは、MICEを、世界に目を向けながら地元に貢献できる仕事だと話します。
高校生が驚いた、地元で動く仕事の規模
地元の若者と関わる機会もあります。協会では、毎年高校生のインターンを受け入れています。観光や地元の行事に関心を持って参加する高校生に、その行事を協会が運営していると伝えると、仕事に興味を持ってくれるそうです。MICEという言葉を知らない高校生も、ライトキューブ宇都宮などの施設を見学すると、仕事の規模に驚き、関心を寄せます。地元の行事への関心から、学会や大会に関わる仕事を知る。インターンでは、施設の見学も交えながら、協会の業務に触れてもらっています。

吉野さんが、ほかの街で暮らして感じた宇都宮の良さ
吉野さんは出身は東京で、宇都宮にIターンしてきました。宇都宮は住環境や商業施設、行政サービスのバランスが良く、住みやすい街だと感じています。
東京に近いことは、暮らしの便利さだけでなく、MICE誘致においても強みになります。日帰りにも宿泊にも対応できる距離感を、吉野さんは宇都宮の魅力として挙げます。駒場さんが人の温かさや地域のつながりを語る一方で、吉野さんは暮らしやすさを支える街のバランスを挙げました。お二人とも、ほかの街で暮らした経験を持ちながら、宇都宮で生活する良さを実感しています。

若い世代に知ってほしい、MICEで働く面白さ
駒場さんが伝えたい、英語への関心を生かせる仕事
駒場さんは、偶然この業界に入りました。当初は、MICEという言葉も知らなかったといいます。いま、若い世代に伝えたいのは、国際交流や英語への関心を生かせる仕事だということです。海外のバイヤーと直接商談し、自分の地域の魅力を伝える。そうした経験をしてきたからこそ、英語や海外に興味がある若者に、この仕事を知ってほしいと話します。
駒場さんが大切にしているのは、人と人との対面でのコミュニケーションです。デジタル化が進み、AIが発展する中でも、人とのつながりや信頼関係を忘れてはならないと考えています。MICEの仕事では、そのつながりや信頼関係が大きな役割を持つといいます。
海外の相手と直接話すことも、地域の人と協力して参加者を迎えることも、人との関わりがある仕事です。駒場さんは、世界を見ながら地元に貢献できることを、MICEの魅力として伝えています。

吉野さんが伝えたい、世界と地域をつなぐ仕事の格好よさ
吉野さんが若い世代へ伝えたいのは、MICEを「かっこいい仕事」だと思ってほしい、ということです。オリンピックやワールドカップのような大きなイベントに限らず、学会や国際会議にも、開催を支える仕事があります。規模の大きな仕事に携わり、世界と地域をつなぐ役割を担うことを、吉野さんは面白く、誇れる仕事だと捉えています。
その魅力を若者に知ってもらうため、情報発信を強め、一緒に取り組んでいきたいと話します。自分の街に人を呼び込み、その人たちを地域で迎える。そうした仕事を、若い世代にとっても「かっこいい仕事」として伝えていきたいという思いがあります。

好きな街で、海外の人と仕事をする選択肢
駒場さんと吉野さんは、宇都宮で暮らす良さを、それぞれの言葉で語ってくれました。その街を開催地として紹介し、訪れる人を迎えるために、行政や地域の事業者と仕事を進めています。
英語を使いたい、人と関わりたい、地元に貢献したい。駒場さんが伝える仕事の経験と、吉野さんが語る「かっこいい仕事」という思いは、そうした関心を持つ若者に向けられています。地元で働きながら、海外の人と直接商談する。お二人は宇都宮を舞台に、街に人を呼び込む仕事を続けています。
宇都宮観光コンベンション協会 Webサイト https://utsunomiya-convention.jp/
編集部取材:宇都宮で開催されたFAMツアー
https://micetimes.jp/fam-tour-utsunomiya-1/
https://micetimes.jp/fam-tour-utsunomiya-2/



